ピョンチャンに学ぶ東京パラ満員御礼への道

5種目全てでメダルを獲得した村岡桃佳

 障がい者スポーツの祭典、平昌(ピョンチャン)冬季パラリンピックが18日に閉幕した。日本選手団は金3個を含む計10個のメダルを獲得し、14年ソチ大会の6個を上回る目標をクリア。史上最多のメダル13個を取った平昌五輪に続く盛り上がりを見せた。その一方で、20年東京夏季大会、22年北京冬季大会へ向けた課題も浮き彫りになった。現地取材を基に検証した。【取材・構成=峯岸佑樹】

 

<7割以上が30歳以上 若手出てこい>

 日本選手団38人中、30歳以上のベテランは7割以上を占めた。パラアイスホッケーの平均年齢は41・9歳。メダリスト4人のうち、アルペンスキーの森井大輝とノルディックスキーの新田佳浩はともに37歳だ。アルペンスキーの村岡桃佳(21)とスノーボードの成田緑夢(24)は躍進したが、他の若手の存在感は薄かった。大日方邦子団長は「若手が育ち、ベテランと競い合える選手層が必要」と分析した。

 今大会でメダルを獲得した国・地域は26に増え、障がい者スポーツの世界的な裾野の広がりを印象づけた。海外では10代選手の活躍が目立った。選手の発掘・強化も進み、競技力向上に用具の技術革新が拍車をかける。スポーツ庁は「オリパラ一体」を提案し、16年からパラアスリートも国立スポーツ科学センター(JISS)の利用が可能になったが、日常的な練習施設はまだまだ少ない。選手発掘と環境改善は急務だろう。

 

<空席目立つ会場 団体4分の1来なかった>

 冬季大会最多の34万枚以上の入場券が売れ、韓国では「低予算で大きな感動を呼んだ」と成功を総括したが、会場は空席が目立った。大雪などの悪天候の影響もあり、企業や自治体の「団体購入」で入場券を得た約4分の1が会場に足を運ばなかった。ノルディックスキーに北朝鮮2選手が出場した時には文在寅大統領が観戦して満員になったが、去ると一転して寂しい客席に戻った。

 五輪に比べて関心が低く、アジアは欧州より障がい者の理解が遅れているといわれている。韓国の地上波3局は当初、大会期間に20~30時間を生中継する計画だった。NHKなどに比べて大幅に少なく、文大統領がテレビ中継の少なさに苦言を呈し、急きょ、各局は10時間程度中継を拡大した。報道陣は日本とドイツの記者が圧倒的に多く、韓国人記者よりもボランティアの数の方が目立った。パラリンピックの前に障がい者に対しての理解を深めることが必要なのかもしれない。

 

<床に数センチの段差 細かい対応必要>

 選手村の食堂は車いすでも通りやすいように机の一部を撤去し、道や出入り口を広げた。食事はビュッフェ形式で料理を取り分けるカウンターの高さは五輪よりも6センチ下げ、冷蔵庫の飲み物は低い位置でも全種類が選べるよう配置を工夫。しかし、床には数センチの段差が所々あり、一部のスロープは傾斜がきつく「滑って危ない」との声も出た。車いすのエレベーターが大混雑し、バス乗り場まで距離もあり会場到着が大幅に遅れることもあった。

 アルペンスキーなどが行われた旌善アルペンセンターでは、観戦者の多くが健常者のためか、路面が雪で覆われ、視覚障害者向けの誘導ブロック上に障害物があるなど配慮に欠けていた。東京大会を「満員御礼」にするためにも、利用者の視点に立った細かい柔軟な対応が必要だろう。残り2年で五輪同様のムーブメントを起こし、共生社会の実現が重要となる。