売れ残り物ハリルに福あり/歴代担当記者振り返る

8月31日、W杯出場を決めた瞬間、ガッツポーズで大喜びする日本代表ハリルホジッチ監督(左)

<Nikkan eye W杯出場特別編(1)>

 日本代表は8月31日のオーストラリア戦に勝ち、6大会連続6度目のW杯出場を決めた。特別連載「Nikkan eye」では日本代表にかかわった歴代担当記者が、これまでのW杯予選を独自の視点で掘り下げる。1回目は「残り物に福あり」。

 出はなをくじかれた。14年W杯ブラジル大会後に就任したアギーレ監督に八百長疑惑が浮上した。公益財団法人である日本サッカー協会としては、疑惑のある監督を続投させるわけにはいかない。結局、15年2月にW杯出場を託した指揮官との契約を解除した。その後、監督人選にてこずった。

 代表監督人事は基本的に、W杯周期で動く。優秀な監督は、W杯が始まる前にすでに水面下で去就が決まる。遅くても、W杯直後には大筋で合意する運びとなる。アギーレ騒動があり、日本協会がハリルホジッチ監督に接触したタイミングは中途半端な時期。いわば、売れ残った監督だった。

 監督人事を主導した技術委員会は、それまでのスペイン、イタリア中心の人選から、この両リーグに絡む監督を候補から外した。両リーグは、過去に複数のクラブが八百長問題を起こしたことがあるため、あえて危ない橋を渡らないことにした。そこでハリルホジッチ氏が、候補の上位に急浮上した。残り物には福がある。まさに、その言葉が当てはまる人選だった。

 ハリルホジッチ監督はこれまで、何度か解任危機があった。しかしサッカーは結果がすべて。W杯出場が決まった今となれば、過去の苦しい記憶は、どんどん薄れていく。最終予選中の失敗や苦労より、これから1年間、どんな強化ができるかが注目される。

 日本はこれまで、アジアを相手にする時と世界の強敵と対戦する時に、戦い方を変える傾向があった。アジアのリズムで攻めて、世界の強豪に逆襲を食らうより、攻撃的選手を1人減らしてでも、中盤の底にアンカーを配置した方が、より現実的との判断だ。相手の猛攻をしのぎ、少ないチャンスを確実にものにできれば、強豪を苦しめることができる。

 中盤に長谷部、山口、井手口と、守備的な選手を並べたオーストラリア戦。このシステムは1年後、強敵がそろうW杯で、有効な戦術になるはず。ハリルホジッチ監督は、アジア予選からW杯本大会まで、戦い方を変えずにまっとうした上に勝つ、初めての指揮官になるかもしれない。それを期待してみたい。【盧載鎭】