ハリル監督、誤算続きの凡戦 ピッチの支配者はハト

厳しい表情でベンチからピッチを見つめるハリルホジッチ監督(左端)(撮影・PNP)

 日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(65)の当ては外れ、お寒い一戦となった。仮想セネガルとして対戦した同じ西アフリカのマリに1-1。期待のMF大島僚太(25=川崎F)は前半途中に負傷交代し、右サイドバックに抜てきしたDF宇賀神友弥(30=浦和)も機能せずPKを与え、前半のみで交代した。FW中島の得点はあったが収穫は乏しく、指揮官は意気消沈。驚くほど元気がなかった。

 ピッチを支配したのはハリルジャパンではなくハトだった。平和の象徴も、平和すぎて刺激のない試合に退屈したのだろう。スタンドからピッチまで約50羽の群れが縦横無尽。収穫の乏しい試合後の会見で激情家のハリルホジッチ監督も、魂が抜けたように、不気味なほど元気がなかった。

 「何を言えるかな、という試合」と第一声。言葉を失い「今日はまだ、分析には入りたくない」と落胆。「たくさん情報が得られたが、ポジティブなものばかりではない。ワールドカップ(W杯)はまだ、まだまだ遠いなという感じです」。やるべきこと、具体的な課題を問われると「すべてです。すべて、すべて、すべて、すべてです」とすべてを5回。それでも足りないような顔をしていた。

 W杯1次リーグで対戦するセネガル対策でマリを迎えたが、誤算続き。主力8人を欠き、若手中心の相手は仮想というには弱すぎた。引き分けが精いっぱいの日本も弱かった。期待の大きい大島を中盤で先発起用したが負傷交代。故障者続出の右サイドバックに本職が左のDF宇賀神を抜てきし、国際Aマッチデビューさせたが、明らかに荷が重くPKを与え先制点をプレゼント。前半だけで引っ込めた。見切りは早かった。

 ハーフタイムまでに予定外の交代枠2を無駄にした。テストは空転。チームに統一感はなく、連係もバラバラで、たまらず途中からロングボール1本の単調な攻撃と化した。前日22日には、W杯1次リーグ突破を「偉業」と位置付け「我々は(1次リーグ)突破の候補ではない」と言い切り、危機感をあおった。コンディション最重視の選考で、コロコロ顔ぶれが変わって肝心の準備はおろそかに。会見を短く切り上げ、パリへフランス-コロンビア戦を視察に向かった。運転手付きのパリへの道は見えても、ロシアへの明るい道筋は、一向に見えてこない。【八反誠】