柴崎が移籍へ極秘渡欧、鹿島幹部も知らず「本当?」

スペイン出発のため搭乗手続きを行う、ニット帽に黒フチ眼鏡、マスク姿の鹿島MF柴崎

 鹿島MF柴崎岳(24)が28日、スペイン1部ラスパルマス移籍に向け、成田空港からスペインに出発した。近日中に現地で正式契約を結ぶ見通しだが、鹿島側へ報告のないまま渡欧。31日までは契約を残しており、極秘行動に鹿島幹部は驚きの表情を見せた。正式契約となれば、同国1部では日本人10人目となる。

 柴崎は、成田空港の人混みをかわしながら、右手で荷物を引いて現れた。黒のニット帽を深々とかぶり、黒縁の眼鏡に白いマスクで「変装」。ビジネスシートのカウンターでチェックインを済ませると、見送り男性と固く握手した。少しだけ笑って別れを告げたが、記者の問いかけには終始無言だった。スペイン行きの搭乗券とパスポートを手に、周囲に声をかけられることもなく飛び立った。

 鹿島のクラブ幹部すら「もともと、今日の練習は来る予定じゃなかったけど」としながらも、「電話しても、つながらなかった。本当に行ったの?」と現状把握が出来ていなかった。21日に柴崎の仲介人から「ラスパルマスから正式オファーが99・9%来る」と伝えられ、タイ遠征(22~27日)参加を免除して移籍準備を許可した。しかし、連絡しないままでの渡欧に同幹部は「俺も今回は分からないわ」と困り顔。スペインの冬季移籍期間が31日で終了するため、残された日数は少なく「誰かとてんびんにかけているのかも」と契約成就を不安視した。

 鹿島は今日29日に新体制を発表する。柴崎の移籍交渉が長引いたことも理由の1つとなり、「背番号10」が初めて空き番号として発表される。ラスパルマスと破談となれば、鹿島が契約を更新するための措置だ。ジーコ、レオナルド、固定番号制以降はビスマルク、本山、柴崎と継承してきたが、新たな10番を任命する時間もなかった。

 早ければ今日にも「ラスパルマス柴崎」が誕生する。クラブ、サポーターも移籍を容認して新天地での活躍を願う。恩返しは、スペインでの活躍と日本代表復帰しかない。

 ◆UDラスパルマス 1949年創立。本拠地はカナリア諸島のラスパルマス・デ・グラン・カナリア。ホームスタジアムは3万1250人収容のグラン・カナリア。スペイン国王杯準優勝1回。2部だった07-08年シーズンにはFW福田健二が所属。第19節消化時(22日)で、6勝7分け6敗の勝ち点25で11位。主力は元ガーナ代表MFボアテング。今冬の補強ではハンブルガーSV(ドイツ)のクロアチア代表MFハリロビッチを獲得。キケ・セティエン監督。クラブカラーは黄と青。同じ諸島を本拠とするテネリフェとの対戦はカナリアダービーとして知られる。