J初の東京ダービー 社員が守る東京/復刻

2001年3月10日付日刊スポーツ紙面

<日刊スポーツ:2001年3月10日付>

 プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月10日付紙面を振り返ります。2001年の即売最終面(東京版)は、J初の東京ダービー 社員が守るFC東京でした。 

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 Jリーグ初の「東京ダービー」FC東京-東京ヴェルディ1969がきょう10日、9年目を迎えるJリーグ開幕戦で実現する。ホームの東京は社員選手のボランチ浅利悟(26)が、東京Vの攻撃阻止のキーマンとして先発することが有力となった。クラブ側の努力も実り前売り券は1日に完売し、約5万人のファンが駆け付ける。選手と東京の社員が一丸となって、記念すべき新ホーム、東京スタジアムのこけら落としを飾る。 

 雰囲気が違った。注目の東京ダービーを翌日に控えた9日、最終調整に汗を流した東京イレブンに緊張感が走る。新ホーム、東京スタジアムでの開幕戦の前売り券は既に完売した。約5万人の大観衆が集まる。MF佐藤が言った。「サッカー選手として楽しみができました」。

 記念すべき東京スタジアムのこけら落としに、東京のチームカラーを打ち出す。社員選手、ボランチ浅利の先発が有力となった。この日の紅白戦で、先発が予想された元日本代表の下平に代わって、主力組に入った。東京Vとの昨年の2試合は、ともに3失点して敗れた。その反省を踏まえ、守備力に優れる、チームの前身、東京ガスからの生え抜き選手を起用するのだ。

 大熊監督は「いろいろ迷う部分」と言葉を濁した。だが柏から今季移籍したばかりの下平は、周囲との連係や戦術面でまだかみ合わない部分がある。一方で豊富な運動量を誇る浅利は、東京Vの攻撃の起点となるMF永井のドリブル突破を阻止する役目に向いている。「(相手を)抑えるのは大丈夫。守備は自信あるから」と意欲をみせた。

 前売り券完売もクラブ社員の努力だった。J2に加入した1999年(平11)から、選手も参加する都内全域でのサッカークリニックは年間200回を数えた。ホーム試合開催前には都内で試合告知のビラ配りをしてきた。昨年12月に開幕戦のホーム開催権を抽せんで手にしてからは、さらに力を入れた。今回は「東京ダービー」という話題性も手伝ったが、2年前からファン獲得のためにまいてきた種が、新ホーム開幕戦で前売り券完売という形で表れた。

 永井、三浦淳、前園らを擁する東京Vに比べ、知名度や日本代表実績のある選手は少ない。だが、先に東京をホームタウンにしたプライドがある。「負けたくないね」と浅利。クラブ社員、選手全員の思いが1つになって、東京の21世紀が幕を開ける。

 ◆社員選手 アマチュア以外の選手で、クラブの親会社と雇用契約を結んでいる選手のこと。Jリーグの契約上はプロでもなくアマチュアでもない。JFLからJリーグに昇格してきた東京や川崎Fに社員選手が多かったことで、Jリーグがその「保護策」として認めた。今季のJ1では、浅利のほかに小林成ら東京に5人いるだけ。5人は社員として仕事を持てる権利がある。

※記録と表記は当時のもの