コバルトーレ女川 3・11JFL昇格初戦に気合

それぞれ仕事を終え、夜に練習するコバルトーレ女川の選手たち(撮影・秋吉裕介)

 日本フットボールリーグ(JFL)に昇格したコバルトーレ女川(宮城)が、参入1年目のシーズンへ挑む。昨季、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)を制覇。市民リーグから、13年かけて5カテゴリー上のアマチュア最高峰に上り詰め、J入りへのスタートラインに立った。3年以内のJ3昇格が目標だ。開幕戦は、敵地でホンダFC(静岡)と対戦。東日本大震災から丸7年となる3月11日に行われる一戦へ、士気を高めている。

 練習が始まった午後6時半過ぎ、気温は0度だった。肌を突き刺すような寒さだが、女川出身のFW千葉洸星(19)は「本当に寒いときは、髪の毛が凍りますよ」と平然と笑う。選手は17時頃に仕事を終え、集合したばかり。だが疲れた表情を見せず、熱気を醸し出していた。

 次なる舞台を見据えている。地域CLの決勝ラウンド最終日に1-0で辛勝し、1位通過で昇格の切符をもぎ取った。決勝点のMF高橋晃司(24)は「女川に帰ってから、応援されているのをものすごく感じました。でもチャレンジャーの気持ちは変わらない」。初年度から在籍するFW吉田圭(30)は「1年に1個しかステージは上がれない。上げてきたものを落としたくない」と残留へ向け、決意をにじませた。

 スタートダッシュを決めたい開幕戦は、特別な日に行われる。7年前のあの日、女川は壊滅的な被害を受けた。クラブは1年間、休止。選手は自主的にボランティア活動を始め、復興を支えた。月日が流れ、次はサッカーで人々を勇気づかせる最高の舞台が整った。 吉田は「女川をサッカーで盛り上げたい中、震災の日に(開幕戦が)決まった。より盛り上げられたら。得点に絡みたい」。小学生だった千葉は、サッカー少年団の先輩が津波で流された。「つらい思いをしたとき、支えてくれたのは女川の人たち。メンバーに入り、得点できれば」と気合を入れた。当日は町内でパブリックビューイングが開催予定。勇姿を町民に見せる。【秋吉裕介】

 ◆コバルトーレ女川のJ3昇格への道のり J3ライセンス取得には、5000人規模の本拠地が必要。だがホームの女川町第二多目的グラウンドは、天然芝や5000人規模のスタジアムを求めるJFLの規定も満たしていない。そこで2年間は周辺地域の競技場でホームゲームを開催し、新競技場を19年内に建設する方針。他にも選手の労働環境の整備、財政面の強化も必要となる。昨年で監督を退き、ゼネラルマネジャー(GM)に就任した阿部裕二氏(46)は「3年後に上がることが目標」といい、行政との連携に努める。

<村田監督一問一答>

 J1仙台でも活躍した村田達哉新監督(45)に、今季への意気込みを聞いた。

 -選手について

 村田監督 1月16日が練習初日でしたが、選手に活気があった。要求に対し、アグレッシブにトライしてくれた。

 -16クラブが加盟するJFLは通常、下位2クラブが降格する

 村田監督 周りのクラブから降格候補と思われているが、だからやりがいがある。個々の能力も上げながら、昨季の推進力があるサッカーをベースに、攻守によりアグレッシブにする。

 -04年に仙台で現役引退後、イタリア・セリエAのキエボの下部組織でコーチを務めた。帰国後は古巣の札幌、なでしこリーグの日テレのコーチを歴任

 村田監督 うまくコミュニケーションを取りながら選手のストロングを発揮できるようになった。女川の選手は朝8時から仕事もしているが、日テレもほとんどそういう選手。選手は本当に疲れているとは思うけど、真剣に取り組んでくれているから大丈夫。仙台やマイナビ仙台の練習に行って、どういう練習をしているか見てみたい。いずれは女川もベガルタみたいになれるようにしたい。

 -開幕の相手はリーグ2連覇中の強豪

 村田監督 胸を借りるつもりでぶつかっていきたい。3月11日だが、自分たちはやってきたことを100%出すしかない。