奈良の地域活用サッカーアカデミーは廃校が選手寮

ボスコヴィラサッカーアカデミーの取り組み

 サッカーに多方面から切り込む企画「サッカー ザツガク」の今回は、選手寮は廃校となった小学校、練習場がリゾート施設という奈良県の珍しい高校チームに迫った。「ボスコヴィラサッカーアカデミー」。選手たちは、通学する連携先の県立山辺高のサッカー部員として活動している。少子化による生徒数の減少で、公立校の廃校が増える中、跡地の再活用と地域活性を図りながら、選手を育成する取り組みだ。

 奈良市の中心から車で約1時間、見渡す限り緑の山々。アカデミーの生徒は17年3月で廃校になった並松(なんまつ)小を改築した寮で寝泊まりし、自転車で5分の山辺高に登校する。通常通りに授業を受けた後は、同じく10分のリゾート施設「大和高原ボスコヴィラ」での練習に向かう。グラウンドは天然芝1面と人工芝2面とぜいたくだ。アカデミーの阿保(あぼ)和宏監督(60)は「サッカーに集中できる環境。食事面や学習面でもサポートしている」と語った。

 もともとはリゾート施設を経営する天平フーズ(本社・奈良市)がグラウンドの有効活用と、奈良県のサッカーレベルを引き上げるため同事業に着目。小学校教諭時代にサッカークラブを立ち上げた実績のある阿保監督を招き、12年にアカデミーを設立した。同社の中塚隆子社長は「地元に密着したモデルのないアカデミーを作りたい」と全寮制を目指していたところ、廃校の跡地利用を求めていた奈良市と思惑が合致した。

 元小学校の寮は「赤字は当然」という天平フーズが約7100万円をかけ改築し、かつての教室が居住スペースだ。運動場や体育館で朝練、自主トレも行える。同社の料理人と栄養士による地元食材などを使った3食が付き、村上ヘッドコーチが寮長として住み込み、生活指導にあたる。

 県外では福井や愛知などから集まった2期生までの31人が入寮。提携する地元の山辺高は毎年25人前後を「アカデミー枠」で生徒として受け入れ、近年悩まされる定員割れの解消にもつながる。

 全国高校選手権出場を目指し、部員は高体連に所属して「山辺高サッカー部」として大会に出場する。昨秋は全国選手権奈良県大会で16強まで進出し、県選抜にも1年生5人が入るなど好スタートを切った。今年の目標は県4強だが、阿保監督は「世界に通用する選手を育成するのが目標。まずは選手権に出場したい」と山あいの廃校から大きな夢を語った。【小杉舞】

 ◆主な廃校の活用 現在、多くの企業や文化施設、宿泊施設、学校などに活用されている。文科省も有効活用する「みんなの廃校プロジェクト」として推進。例えば新潟・聖籠町の亀代中は、サッカーの専修学校である学校法人国際総合学園のJAPANサッカーカレッジとして利用されている。東京・新宿区の四谷第五小は吉本興業グループ東京本部の社屋として活用。北海道登別市の札内小中は酪農工場に、沖縄・今帰仁村の今帰仁中は泡盛・古酒の製造で使われるなど、名産品の工場としても役立てられている。