PK戦やり直しの奈良クラブ「負けに」よぎった不安

謝罪する日本協会の須原清貴専務理事

 過去に例のない珍事が起きた。日本サッカー協会は11日、都内のJFAハウスで臨時の天皇杯実施委員会を開き、天皇杯2回戦(6日、パロ瑞穂)の名古屋グランパス(J1)-奈良クラブ(奈良県代表)戦をPK戦からやり直すことを決定した。再開日程、場所は未定。試合は奈良クラブがPK戦の末5-4で勝利し、3回戦進出を決めていた。しかし翌7日にファンからの問い合わせで、PK戦において競技規則の適用ミスが判明し、この日の決定に至った。

 大金星から一転、異例の再PK戦が決まった奈良クラブは11日夜、矢部次郎理事長が取材に応じ、8日に日本協会から謝罪があったことを明かした。

 矢部理事長によると、8日に、今回の主審ミスについての連絡があり、同日のうちに協会スタッフが謝罪に訪れた。「選手を集めて、協会の人が(ミスを)謝罪をしてくれた」と状況を説明した。

 その時点では、今後の対応が決まっておらず、「負けになるかもしれない」との不安が広がっていたという。PK戦が決まり、矢部理事長は「煮え切らない部分もあるが、前向きにとらえたい」と語った。

 JFLの奈良クラブが、格上のJ1名古屋を倒した番狂わせは仕切り直し。日時は未定だが、12日に審判委が開かれることから、矢部理事長は「明日(12日)明確な説明がほしい」と話している。

 ◆奈良クラブ 91年、奈良市を拠点に都南クラブとして創設。08年に奈良クラブに改称。同年、全国社会人選手権大会に出場し、元Jリーガー5人が加入。09年に天皇杯奈良県予選で初優勝し、同1回戦で勝利。10年は下部組織も設立した。14年に関西1部優勝、全国地域サッカーリーグも優勝。15年からJFL昇格。天皇杯で初めてJ1クラブに勝利したのは14年の仙台戦。17年から長野などで指揮経験のある薩川了洋監督が率いる。