2強明暗 ブラジルに一体感 アルゼンチンは崩壊?

ブラジル対コスタリカ 試合終了間際、ゴールを決め喜ぶブラジルのネイマール(撮影・PNP)

<ワールドカップ(W杯)ロシア大会:ブラジル2-0コスタリカ>◇1次リーグE組◇22日◇サンクトペテルブルク

 「王国」ブラジルが土壇場で底力を発揮した。コスタリカの堅守に90分間ゴールを割れずも、後半ロスタイムにコウチーニョとネイマールがゴールを決めて、2-0と突き放した。初戦でスイスに1-1と苦しいスタートから、E組首位に浮上した。D組でアルゼンチンが最下位に沈み、サンパオリ監督の去就をめぐる雑音が出るのとは対照的。ブラジルは試練を乗り越えて結束を固めつつある。

 苦しんだ分だけ喜びは大きかった。0-0で迎えたロスタイム、マルセロのクロスからコウチーニョの豪快なシュートが決まると、チチ監督は大興奮し、思わず転倒するほどだった。さらに相手GKナバスの鼻先をかすめるドウグラスコスタのクロスに、ネイマールが左足を合わせて加点。「こうして大会中に一体感が生まれていく」(同監督)。劇的勝利がブラジルの結束力を一段と高めた。

 前夜にアルゼンチンがクロアチアに0-3と惨敗した。「それを見て、より集中していかないといけないと思った」と、ビリアンは南米の好敵手を反面教師にしたことを認めた。

 第2戦の戦い方は対照的だった。ともに初戦は引き分けで、アルゼンチンは先発3人を入れ替え、4バックから3バックにし、メッシをトップ下から右へと移した。指揮官の焦りがうかがわれ、裏目に出た。

 ブラジルのチチ監督は「初戦から苦しいのがワールドカップ(W杯)だから」と冷静。負傷したダニーロをファグネルに代えただけで、就任後から継続する4-2-3-1を貫いた。左サイドでネイマールへのマークが厳しくなると、後半は右FWにドウグラスコスタを投入して積極的に動かし、相手守備を分散させたのも当たった。

 さらにアルゼンチンは選手がサンパオリ監督解任を求めたとか、ブルチャガ技術委員長が後任になるとか報じられ、ブルチャガ氏が“火消し”に回る騒動もあったとか。逆にブラジルは、選手と指揮官の距離感がグッと近い。殊勲弾のコウチーニョは、チチ監督の「最後の1分まで諦めないこと」という口癖を信じ、それに応えた。同監督は主将を固定せず、持ち回り制にしている。ネイマールに必要以上の重圧をかけず、全員で戦う意識を根付かせるためだ。南米の両雄はピッチ内外ともに対照的な状況。ブラジルは王座奪回へ一気に弾みをつけた。

 ◆ブラジルとアルゼンチン 20世紀前半までは南米選手権優勝回数で上回るアルゼンチンが格上だったが、ブラジルはペレの登場で58、62、70年W杯で優勝、両国の間にライバル心が生まれたとされる。その後、78年にアルゼンチンがW杯初優勝。W杯での直接対決は過去4回でブラジルの2勝1分け1敗。最後の対戦は90年大会決勝トーナメント1回戦でマラドーナのパスからカニーヒアが決めて1-0でアルゼンチンの勝利。国民同士は特に仲が悪いわけではないという。