香川震えた…チームバスが標的に イラク人の男拘束

<欧州CL:ドルトムント2-3モナコ>◇準々決勝◇12日◇ドルトムント

 サッカー日本代表MF香川真司(28)が所属するドルトムントが爆発の被害に遭い、11日(日本時間12日)にホームで開催予定だった欧州チャンピオンズリーグ準々決勝第1戦モナコ戦が翌12日(同13日)に延期された。チームバスが宿泊先を出た後、バスの近くで3回の爆発があり、DFバルトラが負傷した。チームバスを狙った犯行とされ、テロの可能性もある。ドイツの捜査当局は12日に過激派組織「イスラム国」(IS)との関係が指摘されるイラク人の男を拘束した。

 ドルトムントが試合前に襲われた。現地情報を総合すると、スタジアムに向かうためバスで午後7時過ぎに宿泊ホテルを出発し、大通りに出たところで3回の爆発に遭った。装置はバスに近い街路樹に仕掛けられていた。

 GKビュルキは母国スイスのメディアに「本当の爆発だった。僕らバスの中にいた全員がかがんで、可能な者は床に伏した」と伝えた。窓ガラスが割れ、最後列でビュルキの隣に座っていたスペイン代表DFバルトラが、ガラスの破片に当たって右手首を骨折。腕に破片など異物が刺さり、手術のため病院に運ばれた。無事だった香川ら他の選手は駆けつけた警官に保護されて避難した。

 関係者が急きょ協議し、試合を翌12日に延期することを決定した。既に会場には多くのファンが詰めかけており、試合開始約15分前に発表された。観客はショックを受けたが、「スタジアムとその付近は安全」という案内があり、大きな混乱にはならなかった。

 捜査当局は「チームのバスを狙ったものと考えざるを得ない」とし、12日にはイスラム系の人物2人の関係先を捜索、うち男1人を拘束したと発表した。イスラム過激派のテロの可能性も視野に入れて調べている。ドイツの一部メディアは、拘束されたのはイラク人男性(25)で、もう1人はドイツ人男性(28)と伝えた。いずれもISとつながりがあるという。

 南ドイツ新聞によると、爆発の現場で見つかった犯行声明は「アラーの名のもとに」の書き出しで、ISとの関与を示唆する内容だった。それは、シリアなどで続くIS掃討作戦にドイツが偵察任務に当たる戦闘機を派遣したため、ドイツのスポーツ選手が「ISの死のリストに載った」と主張。昨年12月にベルリンの市場で起きたトラック突入テロにも言及していた。

 インターネット上には極左の犯行を示唆する別の声明もあったが、当局は捜査のかく乱を狙った可能性も含めて慎重に調べている。使用された爆発物に殺傷能力を高める金属片が入っていたことも判明し、爆薬の種類の特定を急いでいる。

 ◆ドルトムント 1909年に創設。ブンデスリーガ優勝8度、96-97年シーズンには欧州CLを制覇し、97年のトヨタ杯でも優勝。本拠シグナル・イドゥナ・パークは収容約8万1359人。クラブカラーは黄色と黒。トーマス・トゥヘル監督。