サニブラウン急成長の背景に冬の砂場歩行と水中トレ

男子200メートル予選1組、20秒52の2着で準決勝進出を決めたサニブラウン(左)。右はブレーク、中央はウイルソン(撮影・河野匠)

<陸上:世界選手権>◇7日◇ロンドン◇男子200メートル予選

 男子200メートル予選でサニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)がまた記録的快挙を成し遂げた。100メートルに続いて、200メートルでも予選を20秒52(追い風0・5メートル)の1組2着で突破。五輪と世界選手権を通じ、100メートル、200メートルともに準決勝に進むのは、日本男子では00年シドニー五輪の伊東浩司以来、17年ぶり2人目、世界選手権では初となった。

 またもスタートを失敗した。100メートル準決勝では4歩目でバランスを崩したサニブラウンは、号砲への反応速度が7人中断然最下位の0秒221。同レース最速のウクライナ選手より0秒088も遅れた。カーブを曲がり、直線に入ると、1着だったブレーク(ジャマイカ)に前へ大きく先行された。後方からも足音が近づいてくる。「ヤバい」。最後は必死で腕を振り、足を前に動かした。

 膝に手を付き、肩で息をしながら、電光掲示板に表示された20秒52のタイムを見て、やや不満げな表情を浮かべる。しかし、2着で同種目史上最年少出場した前回大会に続く2大会連続の準決勝へ進んだ。レース後、右ハムストリングに少し張りも出たが「気持ちをリセットし、しっかりいけるように」と意気込んだ。

 実は価値ある偉業が付いている。過去に日本人男子で五輪と世界選手権を通じ、100メートルと200メートル両方で準決勝に進んだのは10秒00の100メートル日本記録を持つ伊東が00年シドニー五輪で達成して以来、17年ぶり2人目。世界選手権に限れば初めてだった。

 指導するレイダー氏は「一番の基礎から直した」と言う。今冬の南アフリカ合宿。クールダウンの一環で、でこぼこの砂場の上をはだしで歩いた。「(足で)砂をつかむ。地面をしっかり捉える練習過程かな」とサニブラウン。また「完全オフだと体が固まる」と休日も、プールでフォーム確認に努めた。「水中だと負荷もかかる。最後の方は遊び半分で反対側まで誰が一番速くいけるかとかやってます」と笑う。遊び感覚で地道な基礎練習をできたのが、性分にあっていた。東京・城西高時代は接地後、足が後ろに流れ、無駄な動きだった悪癖は消えて、前に大きく足が出るフォームに変化。急成長した。

 ブレークと100メートルから合わせ4レース連続の対戦となる準決勝を突破すれば、03年末続以来、日本人では2人目の決勝進出、そしてボルトの18歳355日を198日更新し、世界最年少ファイナリストとなる。【上田悠太】