市原弘大、谷口徹を手本にリラックスして逆転V

初優勝した市原は仲間から水をかけられて祝福される(撮影・柴田隆二)

<男子ゴルフ:日本ツアー選手権森ビル杯>◇最終日◇3日◇茨城・宍戸ヒルズCC西コース(7384ヤード、パー71)◇賞金総額1億5000万円(優勝3000万円)

 プロ18年目の市原弘大(36=フリー)が、5打差を逆転して国内ツアー初勝利をメジャー初制覇で飾った。首位時松隆光(24=筑紫ケ丘GC)に最終18番のチップインバーディーで追いつきホールアウト。その18番で時松がボギーをたたき、市原の優勝が決まった。メジャー制覇で5年シードと、今大会終了時の賞金ランク2位までが得られる7月の全英オープン出場権も獲得した。

 市原は、ホールアウト後のスコア申告の際に、係員に、時松と並んでいることを知らされた。プレーオフに備え、慌てて向かった練習場で、今度は優勝の知らせが飛び込んできた。17年間勝てなかった男の、無欲の勝利だった。

 「コースと戦うのに必死で、周りのスコアも全然見ていなかった。それがよかったかも。実感がまじないです。これからが大変なことになりそうです」と、満面に笑みを浮かべながら、市原はひとごとのように話した。

 無欲が優勝を決めたチップインバーディーを呼び込んだ。中盤の3ボギーが響いて残り4ホールでトップに4打差とされ、1度は優勝戦線から脱落した。が、15、16番と連続バーディーで息を吹き返し、迎えた18番。第2打がグリーンをオーバーし、土手下から15ヤードの第3打が、カップに吸い込まれた。「狙って打っていません。ボクが一番驚いています」と笑った。

 師と仰ぐ谷口徹がかけつけてくれたときは、思わず涙が出そうになった。「でも、すぐに(お祝いの)水をかけられて、涙が引っ込んだ」という。それでも、谷口のもとで一緒に練習をした仲間に水をかけられると、涙があふれた。

 プロデビューから17年5カ月での勝利は、日本人のスロー記録9位。パターイプスや腰痛など故障にも悩まされた。転機は、先月の日本プロゴルフ選手権で優勝した谷口の存在だった。優勝当日、14番から一緒について回り、祝福の水かけにも参加した。「優勝争いの中で普段と変わらないリラックスした姿、姿勢を自分に取り入れたいと思った」と、谷口を手本にこの大会を戦った。

 日本にこだわらず、アジアツアーなど世界へ積極的に出て行く。アジアツアーの仲間たちからは「スマイル」の愛称で親しまれる市原は「5年シードの責任は重い。気を引き締め、これから切り替えてやっていきたい」と真剣なまなざしで言った。【桝田朗】

 ◆市原弘大(いちはら・こうだい)1982年(昭57)5月29日生まれ、東京都出身。3歳からゴルフを始め、埼玉平成高時代に97、00年と日本ジュニア優勝。世界ジュニア3年連続出場。01年プロ転向。08年からアジアンツアー本格参戦。昨年はシード落ちしてファイナルQT10位の資格で今年参戦している。171センチ、75キロ。独身。

 ◆市原の日本ツアー選手権優勝の記録 日本ツアー選手権で19回中初優勝者が誕生したのは、市原で8人目。国内ツアーでの初優勝が日本タイトルだったのは、16年の日本シリーズJT杯で優勝した朴相賢以来25人目。

 ◆全英オープン出場者 日本ツアー選手権終了時の賞金ランク上位2人となった市原、時松の全英オープン出場権獲得で、今季の同大会出場有資格者は11人。17年度JGT賞金ランキング1位の宮里優作を始め、小平、池田、谷原、ノリス、秋吉、ヘンドリー、川村、小林が出場する資格を有する。