池江璃花子「世界と勝負」平野美宇からメールで刺激

女子100メートルバタフライで優勝し、笑顔で5冠ポーズを見せる池江(撮影・清水貴仁)

<競泳:日本選手権>◇最終日◇16日◇名古屋市ガイシプラザ◇女子100メートルバタフライ決勝

 リオデジャネイロ五輪代表の池江璃花子(16=ルネサンス亀戸)が、女子で大会史上初の5冠を達成した。50メートル自由形を秘技ノーブレス(息継ぎなし)で泳いで24秒57で制し、約40分後の100メートルバタフライでは57秒39で優勝。02年の萩原智子、15年の渡部香生子の4冠を抜いた。5種目すべてで日本水連の選考基準を満たし、7月の世界選手権(ブダペスト)の代表となった。3年連続の世界舞台で初の表彰台を狙う。

 果敢に攻めた。池江はこの日、3本目の50メートル自由形決勝で秘技を解禁。どっと疲労に襲われるノーブレスで、優勝した。4本目は最も世界に近い100メートルバタフライ決勝。「メイン種目で標準記録が切れなかったら…」と緊張で泣きそうになりながらも5冠達成。ゴール後は「ホッとしたのが1番。自己ベストはなかったけど、タフなレースをこなしていい経験ができた」と笑った。

 出場5種目はすべて日本記録を持つ。ただ日本記録保持者が負けられない、というプレッシャーはあまり感じてない。「世界と勝負したい。欧州の大会の記録を見て刺激をもらってます」。レース中にイメージする相手は海外の強豪選手だ。

 志が高い。リオ五輪が終わった昨秋、村上コーチと話し合った。20年東京五輪に向け、今年の目標を世界選手権初表彰台に定めた。

 昨年12月のメキシコ高地合宿前に練習メニューに赤い文字で7つのタイムが追加された。村上コーチが「載せたよ」とさらりといった数字は世界記録だった。

 50メートルバタフライ=24秒43

 100メートルバタフライ=55秒48

 50メートル自由形=23秒73

 100メートル自由形=52秒06

 200メートル自由形=1分52秒98

 50メートル背泳ぎ=27秒06

 100メートル背泳ぎ=58秒12

 16歳は毎日、7つのワールドレコードを目にして泳ぐ。村上コーチは「日本記録が自分の記録だと少し緩むかもしれない。日本のトップならいいや、では困る。世界記録を見て高いラインを目標にして」と言う。

 国内で頭ひとつ抜けても、気が緩むことはない。前日15日は親交がある卓球平野がアジア選手権で優勝。メールで「最後まで頑張ってね」と励まされ「卓球王国の中国に勝ったのは競泳でいう米国に勝つ感じ」と刺激を受けた。「世界選手権は5種目すべて内定した。夏も1本、1本集中して。1バタ(100メートルバタフライ)ではメダルを目指したい」と、目標を掲げた。【益田一弘】

 ◆日本選手権の複数種目優勝 女子の過去最多は4冠で、02年の萩原智子と15年の渡部香生子だった。それ以前は大会日程が短く、種目数も少なかったため同一大会で4種目以上の優勝者はいない。01年に50メートル種目が加わり、背泳ぎの寺川綾ら同一泳法での3冠は珍しくない。男子最多は13年の萩野公介で5種目制覇。