女子高生プロ川合美乃里V 五輪会場の波を味方に

優勝した川合は感無量の表情で海から上がる(撮影・河野匠)

<サーフィン:一宮千葉オープン>◇最終日◇28日◇千葉・一宮町釣ケ崎海岸

 日本女子のホープ、川合美乃里(16)が東京五輪の波を制した。地元の声援に乗って快進撃を続ける川合は、黒川日菜子(20)と決勝で日本人対決。6本目に6・83の高得点を出して逆転し、巧みなポジション取りで13・10-12・40で逃げ切った。最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)への予選シリーズ(QS)で2番目にランクが高いQS3000で日本女子が優勝するのは初。目標の20年東京五輪メダル獲得へ、川合が波に乗った。

 優勝を決めた川合の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。「ここにいること自体、信じられない。本当にうれしいです」。サーフィン仲間に肩車され、砂浜を埋めた約1000人のファンに手を振った。QS3000カテゴリーで日本女子の初優勝。「目標は準々決勝。まさか、優勝とは」。瞳をぬらしたのは涙だった。

 決勝はアマ時代からライバルの黒川との日本人対決。抜群のポジショニングで相手の動きをマークしながら得点した。準決勝では元CT選手のストイル(オーストラリア)に最後の1本で逆転勝ち。「全部、樹(いづき)さんのおかげです」と感謝した。

 昨年9月、同じ「オニール」をスポンサーとする田中樹プロ(33)の本格的な指導が始まった。一宮をホームにする現役プロから技術はもちろん、試合運びを教わってから「負けたことがない」と言う。「今日も指示通りにしたら、勝てました」。信頼は厚い。

 サーフィンはいかにいい波をつかまえるかが勝負を分ける。浜からのコーチの指示で波のいいポイントに動くのも普通。「沖より浜の方が分かりますから。勝つためには技術が5、波が4で運が1くらい」と田中プロは話す。この日も一宮の海を知り尽くした同プロの指示は的確だった。

 波は場所によって違う。「今日は腰(の高さ)ぐらい。逆転したのはももぐらい。ハワイなら頭以上が普通だけど」と川合。大きな波は体格に恵まれた外国人選手が見栄えもいいが、小さな波なら小回りが利く日本人選手が有利。今大会で世界のトップが苦戦したのもこのためだ。「ここで勝てたのは自信になる。東京五輪でメダルが取りたい」。川合は五輪会場の波を味方にした。【荻島弘一】

 ◆川合美乃里(かわい・みのり)2000年(平12)12月14日、徳島県出身。水に顔もつけられなかったが、8歳の時に両親の影響でサーフィンを始め、13歳でプロ転向。昨年5月に波を求めて父勇一さん(43)母あすかさん(43)とともに千葉県一宮町に移住した。昨年、日本プロサーフィン連盟の年間王座を史上最年少で獲得した。通信制の千葉・明聖高2年。167センチ、53キロ。