ハンド部井久、代表デビューは「ほろ苦、ですかね」

日本対韓国 後半、シュートを放つ部井久(撮影・鈴木正人)

<ハンドボール日韓定期戦:日本28-28韓国>◇29日◇東京・駒沢体育館

 男子代表に、史上初めて高校生がデビューした。福岡・博多高3年の部井久(べいぐ)アダム勇樹(18)はノーゴールだったものの、積極的なシュートでスタンドを沸かせた。

 パキスタン人の父と日本人の母を持つ長身194センチの「イケメン・シューター」が、日本ハンドボール界に歴史をつくった。

 「ほろ苦、ですかね」。悔しそうに言った。部井久に出番が回ってきたのは後半。シグルドソン監督から「思い切りやってこい」と言われてコートに立った。ポジションは「エース」と呼ばれる左45度。2度のチャンスに自慢の右腕を振るが、シュートはいずれもゴールにつながらなかった。

 「1点でもいいから取りたかった」「今すぐ、やり直したい」…。悔しさにあふれる言葉は、手応えの裏返しでもある。「まだまだ、できた」「1本目(のチャンス)から打てたのは良かった」…。福岡から駆けつけた父イルファンさん(50)や多くのファンの前で、アピールが足りなかったことを残念がった。

 日本の歴史が好きで、戦国時代の織田信長に憧れている。さらに刺激を受けるのが、現代の「偉人」だ。サッカー日本代表DF長友佑都の本を読み「『今日やらなければ、明日はない』の言葉が忘れられない」と話す。強豪インテルミラノでプレーする姿も目標。「そこで活躍しなければ(海外に)行く意味がない」。高校卒業後の欧州行きを目指す自分を重ねて話した。

 史上初の高校生代表デビュー。「世界のガモ」と呼ばれた元日本代表エースの蒲生晴明(現日本協会副会長)でさえ、中大付高の時は代表合宿止まり。試合出場はなかった。そんな快挙にも「コートでは年齢は関係ないし、問題はここからです」と言ってのける。

 8月4日からは高校総体が始まるが、部井久は途中でチームを離れて世界ユース選手権(ジョージア)に出場する。「まず8強に入りたい。チームにも迷惑をかけるし、いろいろな人の思いを背に頑張りたい」。日本ハンドボール界の未来に向けて、部井久の挑戦は始まったばかりだ。