北島康介氏が涙の萩野に提言「割り切ることも必要」

北島康介氏(16年10月25日撮影)

<水泳:世界選手権>◇30日◇ブダペスト◇男子400メートル個人メドレー決勝

 男子400メートル個人メドレーで、リオ五輪金メダル萩野公介(22=ブリヂストン)は、4分12秒65の6位だった。今大会は銀1個に終わり、28日の800メートルリレー後には泣き崩れた。不調のまま終わった萩野が所属するマネジメント事務所の社長で五輪2大会連続2冠の北島康介氏(34)が「0か100かじゃなく割り切ることも必要」と復活のかぎを挙げた。競泳陣は銀4、銅3で11年上海大会以来6年ぶりに金なしだった。

 前半で勝負はついた。萩野は、リードすべき背泳ぎを終えた200メートルで4番手。そのまま沈んで自己記録より6秒以上遅れて6位。「正直、全然勝負にならなかった」。不調もあって、今大会は200メートル個人メドレーを重視して勝負したが、銀メダル。ショックを引きずって、大会を終えた。

 北島氏 (200メートルで)勝てる相手に負けた。最初の気持ちをどう表現していいか、分からなかった。おれなんかは『できないもんだ』と思って乗り込んだ。ダメッすと。彼はそういう割り切りができない。0か100か。でも大会期間中で3、4の状態から5、6まで上げるような、粘りが欲しい。何くそというか。

 完璧を求めすぎて、わざわざ自分の悪いところを見つけてきて、不安になり、リズムを乱す。萩野は「どうしても僕は弱い人間なので」と嘆いたこともある。

 衝撃的な光景もあった。銀翌日の800メートルリレー。萩野が出遅れて5位。険しい表情で戻ると、瀬戸に抱き寄せられ「公介(萩野)笑えよ。結果を気にせず、笑顔のほうがいいよ」とねぎらわれた。その言葉に両手両足をついて泣き崩れた。「びっくりした」と瀬戸。萩野は「正直、迷惑をかけたし、いろいろふがいない」。

 北島氏 0か100かしかないから、そうなっちゃう。でもね、人間らしいところもあるんだよ。悪いことじゃない。(あの時に)いい意味で前向きに感情表現ができた。もう少し肩の力を抜いてやりゃいい。

 日本は6年ぶりに金メダルなし。平井監督は「自己記録は同じでも、海外勢と比べて大人と子どもが泳いでいるようだ」と、チームに精神的な強さを求めた。

 萩野は泣き崩れた後、仲間に「まだレースが残っている」と声をかけられ、最終種目に臨んだ。「自己コントロールができなかった。未熟な部分が見えて、一番有意義な試合だったと思う。おのれに打ち勝つ。平井先生から『克己心』という言葉をもらった。(金の)ケイリシュが遠くにいっているとは思ってない。絶対勝てると思っている」。涙をさらけ出し、仲間に支えられ、復活を目指す。【益田一弘】