三原舞依の敵は自分にあり「人と戦わないで」の真意

フリーの演技を披露する三原(撮影・河野匠)

 女子で4大陸女王の三原舞依(18=シスメックス)が、国際スケート連盟非公認大会ながらフリーの自己ベストとなる147・83点で2位に入った。課題の表現力などで成長を示し、152・08点で1位だった世界女王メドベージェワ(ロシア)に4・25点差と肉薄。5位だった今春の世界選手権の16・11点差から詰め、グランプリ(GP)シリーズ初戦の中国杯(11月3~5日、北京)につなげた。

 三原の敵は自分だった。中野コーチに「人と戦わないで、自分と闘おう」と背中を押され、1万3555人が見守るリンクの中心に立った。ルッツ-トーループの連続3回転を皮切りに、ミスのないジャンプ。最終盤のステップでは手拍子を誘い「初めからのワクワクした気持ちで、最後まで滑れました」とニッコリ笑った。自己ベストを上回った演技後のガッツポーズが素直な感情だった。

 今季の新プログラムは「ガブリエルのオーボエ」。滑らかな曲調を生かし「天使に見えるように滑って」とカナダ人振付師のウィルソン氏に託された。ところが、9月のオータム・クラシックで「ジャンプを考えすぎた」と132・84点。大会帰りにカナダ・トロントの同氏を訪ねると「全然ダメだね」とバッサリ切られた。

 覚悟はしていた。普段から「氷上の社交ダンス」といわれるアイスダンスの動画を繰り返し再生。大会でも翌朝が早くなければスタンド観戦し、1つ1つの動きに目を凝らす。表現力が課題と自覚するからこそ、2日間での修正で同氏に言われた「手で話をするぐらい、表現しなさい」という助言もスッと頭に入った。

 すでに理想の歩数を踏めていたステップも、足以外の表現に気を使い、この日は最高評価のレベル4。大きなミス無く1位だったメドベージェワを、ジャンプの出来などで評価される技術点で上回った。スケーティングなどが対象の演技構成点も、3月の世界選手権から7点近くアップ。絶対女王の背中が近くなった。

 オータム・クラシックで知ったのは、シニア2年目の怖さだった。自分に勝ち、足かせも「去年の気持ちを忘れずに、楽しんで滑れた」と消えた。18年平昌五輪へ、透き通った笑顔が戻ってきた。【松本航】

 ◆ジャパン・オープン 06年5月に初開催。日本、欧州、北米の3地域が男女各2人ずつ団体戦形式で合計点を競う。ショートプログラム(SP)は行わず、フリーのみ実施。スコアは国際スケート連盟(ISU)で公認されない。