W杯8強見えたジョセフ日本に3つの課題/沢木敬介

25日、フランス戦を終え、ファンにあいさつをする日本代表(撮影・PNP)

 フランス戦にW杯8強が見えた-。サントリー監督の沢木敬介氏(42)はジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC、48)率いる日本代表の戦い方に、19年W杯へのヒントを見た。速いテンポでボールを動かしたラグビーこそ、スピードを持ち味とする日本に合っていると解説。代表のここまでを振り返り、2年後への課題を挙げた。年内ラストマッチを終えた日本代表選手は27日、羽田空港着の航空機で帰国した。

  ◇     ◇

 昨年9月のジョセフHC就任から1年2カ月、今年最後の試合となったフランス戦で「この戦い方をしないとW杯で勝てない」と、選手も気づいたはずだ。勝てた、いや勝たなければいけなかった試合。データからも、ここまでの代表とは違う戦い方が見える。

 特徴的だったのはポゼッション(ボール保持率)。これまでは50%を割り込むことが常だったが、58%だった。ジョセフHCは「こだわらない」と言ってきたが、日本が得意とする速いテンポでボールを動かす攻撃をするには、ある程度のポゼッションは必要。相手陣でボールを持つ時間が長かったから、テリトリー(地域獲得率)も65%と高かった。これこそが日本に合った戦い方だと思う。

 パス本数も、あのフランスの倍。186本を通している。2年前のW杯チームは200本以上も多かったが、ジョセフHCのもとでは大きな数字。ゲインメーター(獲得距離)も496メートルと相手を上回った。これも、日本のアタックが効果的だった証拠といえる。

 データでこれだけ圧倒しながら勝てなかったのは、ミスが多かったから。ミスでボールを失ったボールロストは15回。チーム状態の悪いフランスの14回より多かった。精度を欠くプレーや判断のミスもあった。これが、勝ちきることができなかった原因だろう。

 ジョセフHCは就任時から「キックの活用」を掲げてきた。15年W杯時の「ボールを保持して主導権を握る」のとは対照的だ。キックを使うことには反対ではないし、有効に使えば意味はある。ただ、そのためには精度と蹴るタイミングが重要。ただ蹴っても、相手にボールを渡すだけ。どこで蹴るか、どこに蹴るか、狙い通りに蹴れるか。これを追求する必要がある。

 キックだけでなく、ボールを保持することを織り交ぜながらゲームプランを組み立てることも必要だ。フランス戦が、1つの答えにもなる。キックを有効に使ってテリトリーを奪いながら、ボールと人を速く動かして攻める。やるべきラグビーは、見えてきた。

 W杯へ、課題は3つある。オーストラリア、トンガ、フランスの3連戦で、日本はタックル成功率が81%と低かった。強豪国は同じ秋の連戦で平均87%前後であることを考えれば、まだまだ低い。少なくとも85%以上にはしないと、競り合いで勝ちきれない。もう1つはスクラムなどセットピースの成功率。日本は87%と9割を切っている。スコットランドやアイルランドなど強豪は90%以上。ここを同程度まで引き上げられるかがカギ。さらに、ボールロストの回数を1ケタに抑えること。この3つができれば、強豪と互角以上に戦える。

 あとは、対戦国を想定した準備。15年W杯は、組み合わせ決定直後から南アフリカを想定した戦い方を練り、トレーニングに落とし込んだ。来年は、本格的に相手チームの分析と対策をしなければいけない。本番まで1年10カ月、勝つための準備期間は長くない。

 ◆沢木敬介(さわき・けいすけ)1975年(昭50)4月12日、秋田県男鹿市生まれ。秋田経法大付高-日大を経て98年にサントリー入り。SO、CTBとして活躍し、06年に故障もあって引退した。その後6年間、サントリーでコーチを務め、13年にU-20日本代表監督に就任。14年から代表コーチも務め、15年W杯南アフリカ戦勝利にも貢献した。16年にサントリー監督に就任し、1年目でチームをトップリーグと日本選手権の2冠に導いた。