羽生結弦偉業に共感 冬季競技初の国民栄誉賞授与へ

2月17日、平昌五輪・フィギュア男子フリーの演技を終え、喜びを爆発させる羽生

 平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)フィギュアスケート男子金メダルの羽生結弦(23=ANA)に、国民栄誉賞が授与されることが濃厚となった。2日、菅義偉官房長官が記者会見で、安倍晋三首相が授与検討を指示したと発表した。けがを乗り越えた上での66年ぶりの連覇が国民に感動や勇気を与え、東日本大震災の復興へのメッセージとなったと評価された。実現すれば冬季競技では初めて、個人では最年少受賞となる。

 羽生の偉業は、大きな共感を得た。安倍首相による国民栄誉賞授与の検討指示を受け、会見した菅官房長官は「五輪連覇は社会に明るい夢や希望を与え、東日本大震災の復興への力強いメッセージとなった」と強調した。政府は今後、有識者の意見を聴取し、正式決定。授与式の日程が検討される。

 正式決定すればスケート界で初めて、冬季五輪の金メダリストでも初。個人としては最年少での受賞になる。所属先のANAの城田憲子監督は「政府から認められ、感激はひとしお。フィギュアの金メダルの重さを認めてくれた」と声を弾ませた。羽生が東北高(仙台市)時代にフィギュアスケート部顧問だった五十嵐一弥さん(72)は「これまで授与された夏の競技ではなく、冬の競技でも政府が連覇は国民栄誉賞に値すると判断したのは素晴らしい」と歓迎した。

 羽生は被災地の光でもある。7年前、練習していたアイスリンク仙台で被災。4日間は電気も水もない中、避難所の畳1畳で家族4人で生活した。12年に仙台からカナダに拠点を移したが、被災地を思う心は変わらなかった。12、16年に出した2冊の自叙伝の印税全額をアイスリンク仙台に寄付。14年には津波の被害を受けた宮城県石巻市を訪問した。翌15年には福島県いわき市の仮設住宅を訪ね、原発被害でふるさとを離れた人の話に耳を傾けた。

 2連覇を達成した2月17日、羽生は被災地への思いをこう話していた。「自分が金メダルを持って被災地の方々にあいさつをしたときにたくさんの笑顔が見られた。今度は自信をもって、みなさんにまた笑顔になってもらえたらいい」。宮城県と仙台市では4月か5月に五輪連覇を祝うパレード開催を予定しており、羽生は「ぜひ仙台でお金を落としてください」と復興支援を呼びかけている。パレードは、国民栄誉賞とのダブル祝賀となりそうだ。