野呂竜比人バスケ3人制代表初選出 東京五輪へ1歩

3×3日本代表に初選出された野呂は、ドリブル練習を行う(撮影・中島洋尚)

 東京オリンピックへ1歩-。日本バスケットボール協会は27日、3人制アジア杯(29日開幕、中国・深セン)の男女日本代表各4人を発表。男子で東海大四出身の野呂竜比人(たつひと、29=チーム東京)が初選出された。直近1年間の国際大会出場結果で決まる個人ランキングで国内2位に入り、初代表を射止めた。今年3月にプロ転向、退路を断った苦労人が、大舞台への切符をつかみ取る。

 30歳まで約2カ月、野呂がようやく日本代表の座を手に入れた。最初のターゲットは昨年8強のアジア杯。「一瞬で相手を出し抜く1対1のスキルは負けない。最高のパフォーマンスでメダルを取ります」と目を輝かせた。

 東海大入学前に左足首を疲労骨折。卒業目前までBチームで過ごした。エース多嶋朝飛(29=レバンガ北海道)を擁するAチームと比較して「別チームのようだった」という。4年秋にようやくAチームに呼ばれた。当時、学費を稼ぐため、練習後に深夜のアルバイトを余儀なくされていた。肉体的に厳しい状況下で不完全燃焼に終わった。練習生として参加予定だったクラブチームの消滅という不運が重なり「普通に就職した」。

 朝9時から夕方5時までビル管理の仕事をしながら、クラブチームのRBC東京でほそぼそ競技を続けていた。3年前。裏街道のバスケット人生に突然、光明が差し込んだ。第1回3人制日本選手権に出場。抜群のスピード、フィジカルコンタクトの強さを発揮して初代王者に輝いた。さらに昨春まで3連覇。日本NO・1チームの一員として世界を転戦した。ランキングは国内2位まで上昇した。

 今年3月に「五輪選手を育てたい」という住建情報センターから専属契約の声がかかり、プロ転向を決断した。NBA公認ゴールの設置された真新しいコートで、朝から「遅いときは夜10時半ごろまで」汗を流す。週3回のスクール業務を除けば、練習と試合が仕事だ。

 父竜二さん(54)は、北海道知事表彰を受けたバーテンダー。高校生時代、札幌市内の店から早朝に帰宅すると、午前6時出発で練習に向かう野呂のために毎日弁当を作ってくれたという。「何度もあきらめかけたけど、3×3と出会い、やらなきゃいけないことが見つかった。五輪に出て、父、祖父母、産んでくれた母、恩師、サポートしてくれるみんなに、恩返ししたい」。東京五輪に向け、まずはアジアで結果を出す。【中島洋尚】

 ◆3人制(3×3=スリーバイスリー) 07年に国際バスケットボール連盟(FIBA)が正式に統一ルールを設けた。20年東京五輪から正式種目。1回の攻撃時間が12秒と短く、展開がスピーディー。5人制の2点シュートは3人制1点、3点シュートは同2点。得点が倍となるアウトサイドシュートの正確性が求められる。世界選手権、アジア杯、全日本選手権など国内外のすべての公式大会に出場ポイントがあり、グレードの高い大会に出場するほど国際ランキングが上がる。野呂は26日現在で世界140位、日本2位。

 ◆野呂竜比人(のろ・たつひと)1988年(昭63)6月24日、滝川市生まれ。滝川第一小3年で競技を始める。滝川江陵中3年で全国中学出場。東海大四高1、2年でU-18北海道ブロックエンデバー選出。2年時のウインターカップ16強。東海大-実業団イカイ(静岡)-RBC東京。クラブチームのRBC東京では、3人制のチーム東京のメンバーとして15年から3人制日本選手権3連覇。今年3月、住建情報センターをスポンサーにプロ転向。最高到達点は320センチ。5人制のポジションはフォワード。好物はイチゴタルト。家族は妻と1男。188センチ、91キロ。