張本智和、五輪王者撃破で初優勝「最高の14歳に」

男子シングルス決勝 ポイントを奪い声を張り上げる張本(撮影・栗木一考)

<卓球:荻村杯ジャパン・オープン>◇10日◇最終日◇福岡・北九州市立総合体育館◇男女シングルス決勝ほか

 男子シングルス決勝で張本智和(14=エリートアカデミー)が、12年ロンドンオリンピック(五輪)金メダルの張継科(中国)を4-3の逆転で下し、初優勝を果たした。準決勝で17年世界選手権銅メダルの李尚洙(韓国)を、前日の準々決勝ではリオ五輪金メダルの馬龍(中国)を撃破してのワールドツアー2勝目。20年東京五輪の金メダル候補に一気に浮上した。女子シングルスは伊藤美誠(スターツ)が制し、日本人アベック制覇となった。

 地鳴りのような歓声が会場に響く中、張本は喜びのあまり床にうつぶせで倒れ込んだ。五輪王者との行き詰まる死闘。3-3で迎えた第7ゲーム。12-11でサービスエースを決め、試合に終止符を打った。17年8月にチェコ・オープンで史上最年少優勝を果たして以来のツアー2勝目。27日が誕生日で14歳最後の大会を最高の形で締めくくり「びっくりして倒れ込んだ。2年前にこの大会の21歳以下の試合で初めて勝って2年後また勝てた。最高の14歳になった」と笑った。

 1日の中国オープンで倒した相手だったが「前回とは別人だった」。巧みな攻撃に翻弄(ほんろう)され、2ゲームを先取された。それでも「チキータとか1つ1つの技術をしっかりやっていこう」と諦めない。第3、4ゲームを取り、3-3の五分に戻した第7ゲーム。2度のジュースを乗り越え、再び大物食いを成し遂げた。

 悔しさが変化を生んだ。5月の世界選手権団体戦でメダルなしに終わった後、ラケットの裏面のラバーを硬いものに替えた。得意のバックハンドのさらなる強打を求めたものだが、この日もラリーで得点を奪うなど確かな成長の跡を見せた。「世界選手権の悔しさがここにつながった」と手応えを口にした。

 前日には絶対王者の馬龍も倒すなど、1大会で五輪王者2人を含め、中国選手に3連勝。2年後の東京五輪での金メダル候補に堂々、名乗りを上げた格好だ。「これに満足せずワールドツアーとか世界選手権をどんどん勝っていきたい」。14歳は2年後の大舞台まで進化を止めない。【松末守司】

 ◆張本智和(はりもと・ともかず)2003年(平15)6月27日、仙台市生まれ。家族は元選手でコーチの父宇さんと、95年世界選手権中国代表の母凌さん、小3の妹美和さん。両親が98年に中国・四川省から仙台へ移住。14年春に国籍変更、張姓から張本姓。17年6月の世界選手権で史上最年少ベスト8。同8月のチェコ・オープンではワールドツアー最年少優勝。1月の全日本選手権で男女通じ史上最年少の14歳208日で初優勝した。世界ランク10位。172センチ。

 ◆ジャパンオープン荻村杯 年間12大会のITTF(国際卓球連盟)ワールドツアー大会の1つ。ワールドツアーはプラチナ6大会と、レギュラー6大会に分かれる。五輪、世界選手権、ワールドカップに次ぐ大会で、今大会はレギュラー。種目は男女シングルス、男女ダブルス、混合ダブルスが行われる。賞金総額は17万ドル(約1870万円)。シングルスの日本勢の優勝は男女ともに13年の塩野真人、福原愛以来5年ぶりだった。