希望を持った若者を乗せて、走る。楽天2軍チームバス運転手が見つめた東北

ハンドルから伝わる復興の鼓動。背中から伝わる選手の鼓動。東北楽天ゴールデンイーグルス、チームバス運転手の物語。(2016年3月5日掲載。所属、年齢などは当時)

プロ野球

昨年のNPBコンベンションで、粋な場面があった。楽天チームバスの運転手・渡辺芳博氏(63)が、10年間の無事故、無違反に対して特別表彰を受けた。運転席から見つめてきた東北とイーグルスの5年間を聞いた。

楽天のチームバスを運転する渡辺芳博さん

楽天のチームバスを運転する渡辺芳博さん

NPBから特別表彰 渡辺芳博さん

思いがけない賞だったのでね。うれしかったんですよ。私、観光バスから来たんです。野球が好きとか、いろんな経緯で。観光バスの世界では、10年なんて新米。30年、50年とやって、やっと表彰される。運転だけなら、免許を持っていれば誰でもできる。野球が好きでないと、長くできない。希望を持った兄ちゃんたちを乗せて。話もよく分からないんですけどね。

地震のあった日は教育リーグの試合で、埼玉の戸田にいました。仙台に帰れたのは十数日後でした。

最初は2トンのトラックを借りて、物資を運んだんです。東北道はまぁ、ひどかった。工事箇所、1車線ばかり。凸凹で、段差がどーんとくる。80キロ走行なんて難しい。

高速を手前で降りて、空港の方に行ったんです。全然、家がないじゃないですか。車は転がってるし。何があったんだと。

選手が仙台に帰ったのは5月でした。みんな疲れていたんでしょう。とにかく静かでした。寝たり、自分の世界に入ったり。

高速の凸凹はなくなっていました。あのころ、高速は無料だった。収入のない中で… 早いな、人の力はすごいなと思いましたね。でも、東部道路を境に、全然違って。通るたびに盛り土が増えて、かなり復興も進んでいるけど、まだまだ。頭の中に昔の風景が残っているんで。怖いんですよ。

運転席とハンドルから伝わる、復興の歩み。背中から伝わる選手たちの喜怒哀楽。五感いっぱいで東北を感じてきた

運転席とハンドルから伝わる、復興の歩み。背中から伝わる選手たちの喜怒哀楽。五感いっぱいで東北を感じてきた

バスはチームの看板と思っています。手を振ってくれる人、多いんです。「ここで?」という一般道でも。よく見えますね。「イーグルス、ここまで来たかぁ」とね。少年少女から老人まで、感心するくらい、みんな見てる。野球ってすごい。日本一になった13年に、強く思いましたね。

1999年入社。整理部―2004年の秋から野球部。担当歴は横浜(現DeNA)―巨人―楽天―巨人。
遊軍―デスク―デジタル戦略室―コンテンツ本部―野球部部長。
好きな取材対象は投手、職人、年の離れた人生の先輩。好きな題材は野球を通した人間関係、カテゴリーはコラム。
趣味は朝サウナ、子どもと遊ぶこと、PUNPEEを聴くこと。