【夢幻のグローバル・リーグ:第5話】ついに大脱出!機内で機関銃を突き付けられ…

野球が日本に伝わり、2022年で150周年を迎えました。野球の歴史を振り返る不定期連載Season2は、国際化の先駆けとも言える、あるリーグに焦点を当てます。事実は小説よりも奇なり、全9回の第5話です。(敬称略)

その他野球

フロントマンを振り払い

未払いのホテル代(約486万円)を払わねば、出国してはならない。1969年(昭44)7月3日、ベネズエラはカラカスの地方裁判所が仮処分を下した。翌日、東京ドラゴンズの面々は大胆な行動に打って出た。

早朝のカラカス脱出作戦だ。

てん末をつづった手記を、ナインの1人である元大洋(現DeNA)の室井勝が「週刊ベースボール」(同年8月25日号)に寄せている。決行日となった7月4日の時系列を追いながら、紹介する。

■午前6時25分

「起きろ」の声に目を覚ました。そのときは、われわれ25人を除いて、ホテル全体は、まだ深い眠りの中にあった。

■同45分

ドアを開けて廊下に出た。25人は、足音を忍ばせて正面玄関から外に出た。寝ぼけ眼のフロントの係員が何か大声で叫びながら、追っ掛けてきて、手近にいる者を、手当たり次第に袖を引っ張り、荷物に手をかけるが、もちろん、そんなことで、引き留められるわれわれではなかった。

一足先に出た者が用意した6台のタクシーに分乗した総勢25人は、一路空港に向けてスピードを上げさせた。

■約30分後

ホテル側の追っ手もなく、タクシーは何事もなく空港に到着。われわれは、ロビーの一隅にひとかたまりとなって時を待った。

「カム・バック」「立て」…冷たい感触

その後、午前10時発米国・マイアミ行きの搭乗手続きが始まり、一行は無事にゲートイン。飛行機に乗り込み「これでもう安心」と思った時だった。当局の人間が乗り込んできて、こう言った。

「カム・バック」

メンバーの1人、福井勉が当時の様子を語った。

子どもの頃、平和台球場で見た情景がプロ野球観戦の原点。大学卒業後は外務省に入り、旧ユーゴスラビアのセルビアやクロアチアの大使館に勤務したが、野球と縁遠い東欧で暮らしたことで、逆に野球熱が再燃。30歳を前に退職し、2006年6月、日刊スポーツ入社。
その夏、斎藤佑樹の早実を担当。いきなり甲子園優勝に立ち会うも、筆力、取材力及ばず優勝原稿を書かせてもらえなかった。それがバネになったわけではないが、2013年楽天日本一の原稿を書けたのは幸せだった。
野球一筋に、横浜、巨人、楽天、ロッテ、西武、アマチュアの担当を歴任。現在は侍ジャパンを担当しており、3月のWBCでは米・マイアミで世界一を見届けた。
好きなプロ野球選手は山本和範(カズ山本)。