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男子400M障害決勝 為末銅!骨折覚悟前転ゴール

 05年8月11日付 日刊スポーツ

 【ヘルシンキ9日(日本時間10日)=首藤正徳】
 男子400メートル障害で為末大(27=APF)が銅メダルを獲得した。今季の持ちタイムは決勝に臨んだ8人中最下位だったが、突然の風雨という強運も味方につけて経験と戦略をフル活用。48秒10で3位に入った。01年エドモントン大会の銅メダルに続く2つ目のメダル獲得は、日本人3人目の快挙だった。

世界陸上ヘルシンキ大会 男子400メートル障害決勝で銅メダルを獲得した為末大は日の丸を手にした場内一周でガッツポーズ(05年8月9日)
世界陸上ヘルシンキ大会 男子400メートル障害決勝で銅メダルを獲得した為末大は日の丸を手にした場内一周でガッツポーズ(05年8月9日)

 競技を超えたレースだった。一発勝負のバクチのようだった。レースを終えた為末の言葉がそれを雄弁に物語る。「400メートル障害で勝ったというより、今日は賭け事に勝ったという感じ」。雷雨の影響でスタート時間は約30分遅れ、風雨の中の悪条件。すべてを戦略に生かした。

 為末 選手村で自分の勝てる展開を想像した。嵐になって、レースが遅れる。若手選手たちは動揺して集中力が切れる。そうしたら怖いくらいに状況が重なった。コースも(後方の選手たちの視界に入る)理想的な7レーン。しめたと思いました。1回目にフライングがあった。メダルが見えてきました。

 戦略はレース前の控室から始まった。雷雨による2時間の競技中断中に情報が混乱した。翌日に順延の一報もあった。若手選手はその都度アップしたり、荷物をかばんに詰めたりを繰り返して消耗した。その間、為末は平常心を保ち、ゆっくりと体を動かし続けた。これも作戦だった。

 為末 自分は体を動かしていたので、トラックに出てからはスタート直前までアップをしなかった。若い選手は自分やサンチェスを見て同じようにしようとする。だからわざとアップする時間を遅らせた。彼らは待ち時間に十分に体を動かしてなかったですから。

 号砲と同時に突っ込んだ。1台目までに全精力を注ぎ込んで疾走。ペースを度外視した無謀な暴走だった。そのままバックストレートを駆け抜けた。7レーンの特性を最大限に生かして、後方の選手たちをパニックに陥れる戦略だった。

 為末 選手たちが集中力を欠く、雨の中でしか通用しない作戦でした。7レーンは後方からよく見える。経験のない選手はつられるんです。スピードが落ちても、そのペースについ合わせてしまう。自分も若いころにだまされた経験があった。だから、いつかやってやろうと思っていました。

 8台目までトップ通過。9台目で3番目に落ちた。10台目で19歳のクレメント(米国)に並ばれた。「9台目ですべての力を使い果たした」(為末)。しかし、ゴール直前、前代未聞の大作戦を実行に移した。

 為末 前転してゴールに飛び込むつもりでした。深い角度でラインに突っ込むように。手の骨が折れるくらいの覚悟はありました。

 4位に100分の8秒差の3着。雨に打たれながら両拳を突き上げた。周到に準備されていた奇跡。01年の銅メダルから4年。苦しみ抜いた男は、長い苦闘のキャリアを一発勝負にすべてつぎ込んだ。「4年間、勝負強くなりました」。為末の言葉に実感がこもっていた。




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