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美姫負けて強しフリー完ぺき/フィギュア

女子フリー終了後、笑顔であいさつする安藤美姫(撮影・田崎高広)
女子フリー終了後、笑顔であいさつする安藤美姫(撮影・田崎高広)

<フィギュアスケート:全日本選手権>◇28日◇大阪なみはやドーム◇女子フリー

 世界女王は負けても強かった。安藤美姫(20=トヨタ自動車)が完全復活した。SP2位で臨んだフリーでほぼ完ぺきな演技を披露。猛追及ばず、優勝した浅田真央(17)にわずか1・15点差の2位にとどまったが、フリーでは堂々の1位。国内大会で参考記録ながら合計204・18点の自己最高点をマークした。試合後は来年2月の4大陸選手権(韓国)での今季初の4回転ジャンプ挑戦を宣言。同3月の世界選手権(イエーテボリ)での日本人初連覇を視界にとらえた。SP4位の中野友加里(22)が3位。この上位3人が世界選手権代表に決まった。

 負けた。それでも安藤は強かった。冒頭の連続3回転ジャンプを決めると、情熱的なカルメンになりきり、赤と黒の衣装で悩ましく銀盤を舞った。大トリで登場し、11度のジャンプはすべて華麗に着氷。「今日はエキシビションみたいに楽しかった」。大口を開けて気迫の表情でフィニッシュすると、ルージュの間から白い歯がこぼれた。

 逆転Vこそ逃したが、フリー135・50点は堂々のトップ。国内大会での参考記録ながら、自己最高となる204・18点をマークした。痛めている右肩と右太ももは完調ではなかったが「演技中は集中していてそこまで痛くなかった。自分らしい演技ができた」。演技を終えてスケート靴を脱ぐと、思い出したように右肩に痛みが走ったという。

 復活のため自分自身をいったん白紙に戻した。フリーで3度転倒して4位に惨敗した、1日のNHK杯の直後。練習場の氷の上で何をするでもなく、ただ静かに漂う安藤の姿があった。スケート靴をはき、リンクには立っても、練習はしない。「自分が滑りたいと思うまで滑らなかった」。続けること3日間。心と体をリセットして練習を再開した。今回は優勝ならずも、自信を取り戻すには十分の内容だった。

 世界選手権連覇へ向け、ついに「伝家の宝刀」を抜く覚悟も決めた。前哨戦として2月の4大陸選手権へ初出場することを表明した上で「4回転を入れて試したい」と明言。公式戦での挑戦は06年トリノ五輪以来、成功なら03年の全日本選手権までさかのぼる。五輪以降は成功率が上がらず「安全策」のため封印してきたが「最近は音楽をかけた練習で成功する確率が上がっている。回転軸もいい」と胸を張る。この日も昼間の公式練習で1回トライして、鮮やかに決めていた。

 3月の世界選手権で優勝してから9カ月。モチベーションの低下から「もう試合に出たくない」と悩んだこともあった。山あり谷ありの07年を乗り越え、今月18日に20歳の誕生日を迎えた。「今は『試合に出たい』という気持ちが持てるようになった。もう大丈夫です」。最高の喜びは、初春のイエーテボリまでとっておけばいい。【太田尚樹】

[2007年12月29日9時36分 紙面から]

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