【タンパ(米フロリダ州)14日(日本時間15日)=大塚仁】ヤンキース松井秀喜外野手(34)が復活への第1歩を鮮やかにしるした。14日キャンプインしたバッテリー組に合流する形で始動。昨年9月の左ひざ手術後初めてとなるフリー打撃を行い、38スイング中3連発を含む6本の柵越えをマークした。快音を連発したスイングに、見守ったジラルディ監督も高評価。今季はDHでの出場が有力視される中、何よりも大事な打撃で健在ぶりを示した。

 GMSフィールドのスタンドからは自然と拍手がわき起こった。スイングを重ねるごとに松井の打球は鋭さを増していく。11スイング目に初アーチを放つと、20スイング目に2発目を右翼席に放り込んだ。さらに圧巻は25スイング目からの3連発。波に乗ったら手がつけられない松井らしいバッティングが打撃練習初日から披露された。38スイング中6本の柵越え。「今季初めてのフリーとは思えない」という声も周囲で上がるほどだった。

 すぐ後ろでジラルディ監督が見ているとなれば力が入らないわけがない。ポサダ、モリーナの捕手コンビと3人1組で行ったフリー打撃。最も鋭い打球を飛ばし、最も強烈なインパクトを残したのは間違いなく松井だった。松井は「久しぶりと言っても、長い間やってるんであれぐらいのボールだったら対応できます。試合やれって言われたら無理だけど」と涼しい顔。ジラルディ監督は「チームにとって大事な選手。状態がいいということが見られてよかった。ひざに力があった」と褒めちぎった。

 昨年9月22日の左ひざ手術以来、5カ月ぶりの打撃には不安もあったはずだった。慎重を期すチーム方針で、ウオーミングアップもバッテリー組とは別に屋内で行った。ジョギングにはトレーナーがぴったり付き添い、打撃練習の合間には屈伸運動やアキレスけんを伸ばす運動を行いながら下半身の状態をしきりに確かめた。初日とあって手探り感は隠せなかったが「ひざの状態はいい。大丈夫です」とまずはひと安心。中身のある打撃内容と合わせ、表情は明るかった。

 25日に始まるオープン戦では初戦からの出場を志願している。18日からの野手組キャンプではランニングなど一部で別メニューとなる見込みだが、打撃に関しては不安のないことを初日から示した。「ある程度は気持ちよく振れました。現時点ではまあいい感じで打ててるんじゃないですか」。場合によってはDHのライバルとなるポサダを上回る状態の良さは、ジラルディ監督の脳裏にも焼きついた。開幕はまだ1カ月以上も先だが、松井自身が手応えをつかんだことが今後に向けて何よりの収穫だった。