Jリーグで、日本人初のプロのホペイロとして活躍してきた松浦紀典氏(46)は、今も魂を込めてスパイクを磨き上げている。

 「ホペイロ」とはポルトガル語でスパイク、ユニホームなどすべての用具を管理、準備する専門職のこと。

 南米や欧州のビッグクラブにはほぼ例外なく、こういったプロが在籍しているが、Jリーグのクラブでは、まだ他の仕事と兼務している例が多い。

 松浦氏は93年にヴェルディ川崎で仕事を始め、03年に名古屋グランパスに加入した。昨年末、J2降格が決まった名古屋を電撃的に契約満了で退団。現在フリー。プロのホペイロとして25年目のシーズンを過ごしている。

 拠点は今も愛知。個人的につながりのある選手からの依頼でスパイクを中心とした用具を手入れする毎日。今までと変わらない仕事ぶりで、日本のサッカーを支えている。

 変わったのは、クラブを離れ所属なしになったこと。今まではクラブハウスに通っていたが、新たな仕事場として倉庫を借りた。

 「空調完備です」と笑う。

 冷暖房は、自身の快適さのためではない。スパイクの状態を一定にするために必要だから。徹底している。

 日本代表クラスの選手を筆頭に、誰からも絶大な信頼を寄せられてきた。Jリーグとともに歩んで四半世紀。所属クラブなしは不思議だが、仕事に対する思いは変わらない。

 「やっぱり、24年やってきた経験をどこかのチームのために生かすことができたらと思います。海外のクラブだって、全然大丈夫です」

 確かな腕が、さび付くことはない。

 「選手だったら、試合に出ていないから、試合勘が気になるということはあるんでしょうが、ホペイロは関係ありませんから」

 この夏、Jリーグには、神戸にポドルスキ(ドイツ)、札幌にチャナチップ(タイ)という、注目選手の加入が内定している。

 そんな大物に負けない“助っ人”が、ここにいる。今日も魂を込め、プロの仕事を続けている【サッカー担当=八反誠】