日本代表ＭＦ遠藤保仁（３２＝Ｇ大阪）が「ジーコ仕込み」のＦＫでジーコ・イラクを撃破する。日本代表は３日、新潟市内で親善試合ＵＡＥ戦（６日、東北電ス）とＷ杯アジア最終予選イラク戦（１１日、埼玉）へ向けた合宿を開始。遠藤はイラク代表のジーコ監督（５９）が日本代表監督を務めていた０２年から０６年にかけて学んだＦＫ技術で、イラクのゴールをこじ開ける。勝利で「恩師」へ恩返しをする。

　ザックジャパンの軸、遠藤の脳裏に懐かしい光景がよみがえった。ジーコ・ジャパン立ち上げ直後、中村俊とＦＫの練習に興じていた時のことだ。ＦＫで世界を震え上がらせてきたジーコが近寄って来ると、今でも忘れられないアドバイスを受けた。

　遠藤

　ＦＫは相手の額を狙えということを言われた。自分の立ち位置から見て右側を狙う場合は壁の右から２番目の人の頭、左側を狙う場合は壁の左から２番目の頭を狙えと。

　額を狙えば壁に入った相手選手は恐怖で一瞬、首をすくめ頭が下がる。ＧＫから見ると、壁の頭が下がったわずかなスペースからボールが飛び出てくることで、完全なブラインド状態となる。ブラジル代表でＦＫの名手としてならした「神様」の貴重な助言だった。

　「ＦＫを蹴る時の精神状態の持ち方や、ＦＫを蹴る前の流れをしっかり作ることも言われました」。それまではピッチにボールを転がすように置くこともあったが、ジーコからはボールを確実にセットすること、風向きなどの周囲の状況まで気を配ることを諭すように伝えられたという。

　ジーコ・ジャパン時代は０６年Ｗ杯ドイツ大会でフィールドプレーヤーでは唯一出場機会がなく、ほぼ控え暮らしを強いられたが、それでさえ「多くの試合を経験できたことが今に生きている」と前向きにとらえている。ブラジル代表の「１０」を背負っていた男から「代表の一員でいることの重みを知ることも学んだ」と振り返った。

　１１日のイラク戦ではジーコは遠藤を「要注意人物」としてマークしてくることは間違いないが「それはうれしいことですね。僕をよく知ってもらえているのは光栄なことです。でも、試合になれば関係ない」。Ｗ杯ドイツ大会から６年。日本にとって欠かせない存在となった遠藤の右足から恩師ジーコへの「恩返し弾」が繰り出される。【菅家大輔】