<J1:川崎F2-0千葉>◇第3節◇30日◇等々力

 無我夢中で飛び込んだ先でゴールが揺れていた。前半44分、FW久木野聡(20)はMF森の右クロスに食らいつき頭で押し込んだ。直後に先輩たちに抱きしめられ、押しつぶされた。「覚えてない。ボールがフワッと上がって大丈夫かと」。プロ3年目で初めて本職のFWで先発。記念すべき一戦で、チームの今季初勝利を決定づけるダメ押し点を入れ、「最高」と喜びをかみしめた。

 FW7人の中では7番手で、むしろ昨季も起用されたサイドの控え要員だった。それがFWの相次ぐ故障離脱と起用法への不満を訴えたフッキの電撃退団で、残ったFWが鄭と2人になりチャンスがめぐってきた。「ぶっ倒れるまで走る」と言ったとおり、前線を駆け回りDFをかく乱した。前半2分に先制点を決めた鄭も「目を合わせ要求しながらやった。うまくいった」と好連係に胸を張った。

 前夜には「必勝祈願」をした。寮の近くの洋食店「グリチーネ」で好物のハンバーグを食べた。ホーム戦の前に1人で行く「隠れ家」で、食べて試合に出れば負けはない。この日はチーズハンバーグとサラダを注文し、しめて1400円。「おいしかった。食べれば勝つんですね」と喜んだ。

 今季公式戦5戦目で初勝利の関塚監督は、「慣れないFWで技術の高さと飛び出るタイミング、ゴールの嗅覚(きゅうかく)を出してくれた」と久木野を褒めた。ジュニーニョと黒津が近日中に復帰予定も「1つの位置だけじゃなくトップ下、サイドとずっとやってきた」と、貴重なスーパーサブとして評価。その声に久木野は「出られるなら、どこでもやります。準備したいです」と初々しく顔を赤らめた。【村上幸将】