Jリーグは28日、東京・文京区のJFAハウスで会見を開き、川崎FのFW我那覇和樹(27)がドーピング規定違反で受けた処分を無効としたスポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定を受け、鬼武健二チェアマン(68)が同選手に謝罪した。6試合出場停止処分の記録を抹消し、出場できなかった試合分の補てんを検討する意向を表明。一方で、同選手がドーピング規定違反だったのか否かの判断がCASから示されなかったことへの不満も口にした。

 鬼武チェアマンが、会見の冒頭で我那覇に謝罪した。1審制の独立仲裁機関であるCASから、Jリーグが同選手に下した処分が無効と裁定され「結果を真摯(しんし)に受け止め、決定に従います」と発言。さらに「我那覇選手には本当に1年間、苦労をかけた。つらい思いをさせた。本当に申し訳なかった」と謝った。同選手に科した6試合の出場停止処分の記録抹消を約束し、その期間に得られる可能性があった出場給などの補てんについて今後、検討していく意向を示した。

 一方で同チェアマンはJリーグ、我那覇サイドも求めていた、今回のケースがドーピング規定違反か否かの判断がされなかったことへの不満を口にした。「残念。困惑している。将来に禍根を残すことになりかねない」と話した。同席した原秋彦弁護士は、CASが裁定理由として静脈内注入(点滴)を受けた行為が「ドーピング違反を犯したものであったとの結論に達したとしても、同人には何ら落ち度はないので制裁を受けるべきではない」とした点に言及。「正当な医療行為と認定された表現は取られてない。違反かそうでないかも判断してないし、Jリーグの判断が間違いだったとは(CASは)言ってない」と主張した。ドーピング行為ではないとCASが認定したとする、我那覇サイドの発表とは180度違う見解だ。

 同チェアマンは「最終責任は私にある。処分?

 検討します」と話し、ドーピング禁止規定のチームドクター、選手への説明不足については認めた。その一方で、川崎Fに科した1000万円の制裁金については「今のところ返す論拠がない」(羽生事務局長)とし、我那覇が求めている裁判費用の負担については、CASから命じられた2万ドル(約210万円)以外の負担には応じない姿勢を示した。