世界でただ１人の「女性５メートル・ボルター」イシンバエワが、一時の低迷を抜け出した。２００４年アテネ五輪で金。２００５年７月には女性として初めて５メートルをクリアし、同８月の世界陸上ヘルシンキ大会では世界記録を１センチ上積みして優勝を飾った。しかし、その後が問題だった。「世界陸上で燃え尽きてしまった。競技にモチベーションを持てなくなってしまったの」。

　バーンアウト症候群に悩んだ女王は２００６年、コーチを代えた。かつて鳥人ブブカを指導していたペトロフ氏と組み、モナコに移住。練習もロシアを離れ、モナコとコーチの住むイタリアで行うようになった。でも、記録の伸びは止まったままだった。８月には欧州選手権を初制覇したが５メートル０２の世界記録挑戦には失敗。結局２００６年は１度も世界新を跳べなかった。

　思い切った挑戦が実を結んだのは２００７年２月。ウクライナの室内大会で４メートル９３と世界記録を更新して復調を実感した。競技中の笑顔も戻った。２年ぶりの５メートルジャンプ、世界新に手応えをつかんで大阪にやってくる。

　エレーナ・イシンバエワ。
　１９８２年６月３日、ロシア南部のボルゴグラード生まれ。５歳で体操競技を始めるが、身長が高くなりすぎたために１５歳で棒高跳びに転向した。１９９９年の世界ユースを制して国際舞台に登場したが、２０００年シドニー五輪は予選敗退。２００４年に世界室内、アテネ五輪、世界ファイナルを制して女王の座を不動にした。２００５年７月にロンドンで女性として初めて５メートルをクリア。同８月の世界選手権で１センチ記録を更新した。これまで世界記録更新は２０回。１７４センチ、６５キロ。

• ５メートル０１（２００５年８月１２日・世界陸上ヘルシンキ大会）＝世界記録
• ４メートル９３（２００７年２月１０日・ウクライナ、ドネツク）＝室内世界記録

• ２０００年　シドニー五輪予選敗退（記録なし）
• ２００３年　世界陸上パリ大会２位（４メートル６５）
• ２００４年　世界室内優勝（４メートル８６）
• ２００４年　アテネ五輪優勝（４メートル９１）
• ２００５年　欧州室内優勝（４メートル９０）
• ２００５年　世界陸上ヘルシンキ大会優勝（５メートル０１）
• ２００６年　欧州選手権優勝（４メートル８０）