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新弥のDAYS'

2007年12月23日更新

選手がテレビに

<出て欲しくも、出ないで欲しくもある>

 年末年始ともなれば、スポーツ選手をいろいろなテレビ番組で見かけるようになる。

 「いつも試合で見せる横顔とは全く別の素顔」を、実は選手自身が一番見せたがっているのかもしれない。「え、この人があんなことをする選手なの」という”意外性”で驚いてもらう楽しみ症候群にはまる選手もいる。

 

 昔は、選手はテレビやラジオなどには滅多に登場しないし、五輪連続金メダルとか日本シリーズ連覇などのよほどの「偉業」を達成した人でなければ、マスコミもあまり取り上げようとはしなかった。出演を交渉しても関係者が間に入って止めることも多かったし、選手自身が「まだとても、そんな次元のことはやり終えていない未熟者ですから」とか「練習が忙しいので」と断ることが多かった。

 そういう時代に育ってきた、本欄筆者(61歳)世代からすると、今の「誰でも出てしまう」状況には少し違和感がある。

 別に選手がテレビに出て悪いとは思わないし、野球などのプロ競技の選手はまた話が少し違うが、いわゆるアマチュア選手がタレントさんと競演して楽しくやっているのを見ると(やっかみ半分もあるとして)「こんなことしていて、いいのかな」という心配はある。<注=ここでいう「テレビ」とは、スポーツ報道番組ではない、バラエティーなどの企画制作番組のことです>

 

 若い人から見れば「1年の長い時間の中で、少しぐらいは」と、おやじ論理が腹立たしいかもしれない。筆者も若い頃は得てしてそういう「年寄りの論理」に憤怒を感じ、その怒りを新聞原稿の端々に入れた。入れれば年配の上司はすぐにそれに気づき「なんだ、これは」と怒りながら、その部分を書き直してしまう。  けれどたまには見過ごされたり、修正の時間がなくて、そのまんま「反抗的なニュアンス」の原稿が新聞に載って、一部で好評、社内の上役の会議で非難囂々(ごうごう)「後藤は生意気だ」のレッテルが貼られた。それでも「書いたもの勝ちだ、ざまあ見ろ」と小躍りして喜んだ。

 それが、年をとれば昔の上役と同じ、いやそれ以上に保守的になって、「選手はテレビなどにちゃらちゃら出るべきではない」などと怒っているのだから、人生面白い。

 正義は年齢とともに変化するのだ(笑い)。

 

 テレビ出演に要する時間はともかく、そういう場で「本音」のようなことを話してしまうと、せっかく「耐えてきた」根性? の積み重ねのダムが壊れ、執念の水がどっと流れ出てしまうのではないか。

 実は、それが一番怖い。

 自分がどんなに苦しいか、あるいはその裏返しで「いかにいい加減か」、などといった「競技者の真実」は、隠しているからこそエネルギーになるのであって、あまり過度に話してしまっては力を失う。

 だから、こういうことを言う人もいる。

 --大会前にけがや故障をしている選手が「それを秘して」戦ったとき、不思議に予想外の好成績が出たりするが、事前にそういうことをべらべら話すと、ため込んだ心のエネルギーのようなものが離散して、本当にろくでもない結果に終わったりするものだ。選手は、頂点未満の現役のうちは、あまり自分の内側のことを人前では話さない方がいい--。

 実に古くさい考え方だが、集中力とかスポーツ心理学の側から見ると、「息苦しさとの戦いから逃げるな」という点で、正しいかもしれない。逆に、そうやって息苦しさから自分を解放してしまうと楽になる、という考え方もあるが、「楽にならないで、自分で苦しんで乗り越えるのが競技者」という考え方もある。

 

 一方で、「いや、あの選手の素顔をもっと知りたい」というファンは多いだろう。また「どんな人なのか、ファンが知りたがっている。それに答えたい」「素顔を見せることで競技への関心も高まるはず」といった選手(や代理店)の論理もある。

 が「それはものごとの優先順位を無視した、インチキの論理だ」と決めつける人もいる。  確かに競技者とは何かを考える優先順位の上では、選手は素顔を知ってもらうことで競技への関心を集めるのではなく、本来は競技の充実によって競技への関心を集めるべき存在である。

 歌手は、歌そのものによって、小説家は小説そのものによって。政治家は政治そのものによって人々を魅了し、社会を豊かにする存在である。個性はそれぞれの仕事でにじみ出すものである。

 だから「テレビに出るのは競技全体のため」という理屈だけは成り立たないということなのだろう。それに「素顔」は本来、隠れていていい。 何となれば、みな人間なので、みな同じで、たいして特別ではない(笑い)。

 まあ、テレビのバラエティー番組出演などは、適度がよろしかろう。出ている人をみじんも責める気はないが--だってどの番組も見ていて事実面白い!--年配者なりに、いろいろ余計な心配をするのである。



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プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、61歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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