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後藤新弥の「スポーツ&アドベンチャー」
2007年03月13日更新砂浜走スタート!!
酸素不足で「体内春闘」のストライキ・・・
かすむ目に、海岸線の建物が蜃気楼(しんきろう)のように浮かんでは消え、振り返れば波打ち際に、がにまたおやじの足跡が情けなく付いてくる。神奈川県藤沢市の砂浜を走る「湘南ビーチラン2007」シリーズ第1戦が4日行われた。世界で活躍中のトレールランナー石川弘樹さん(31)のコーチを受けて初挑戦した。わずか3キロなのに脚はぱんぱん。持久系から瞬発系まで肉体の全域が悲鳴を上げた。
早々筋属疲労
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| 4日午前10時、石川弘樹さん(中央)とともに初めてのビーチランをスタート。笑顔はここまでだった(亀田正人撮影) | |
おやじの姿は、まるでアフリカ砂漠を逃げていく敗残兵だった。湿った砂の方が少しでも楽だろうと、波打ち際をよろよろ走った。上がってくるサーファーとぶつかりそうになる。波が足に掛かった。冷たい。
スタートこそコーチ役の石川さんと並んでダッシュしたが、じきに付いていけなくなった。当然だ。
鵠沼海岸から辻堂方向へ往復3キロ。はってでもと思ったが、集団から置いていかれると集中力が途端に切れる。肺や心臓も苦しいが、ジョギングと違って筋肉を酷使する。「筋属疲労」を起こした細胞が酸素の特別手当を要求し始める。「不景気でそんな余裕はない」と拒否すると、ストを起こして引きつり始めた。
体内春闘だ。
1キロも行かないうちにひざに手を当てた。目がかすむ。はるかかなた、見覚えのあるラブホテルが蜃気楼のように浮かんでは、春がすみに消える。
ぼんやりしていると中間点で折り返した石川さんらが早くも現れ、近づいてきた。うわっ、ロンメルのタイガー戦車隊か。注目されそう
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| 世界の山を走り続ける石川さん | |
「42・195キロだ、ハーフだと、五輪や陸連が決めた枠に人生を押し込むことはない。もっと野山を自由に走って楽しもう」。偉そうにそんな演説をしたことがある。仲間が「いい発想だ」と反応し、手作りのシリーズ戦を組んでしまった。言い出しっぺとしてモニター出場を割り振られた。ボランティアも楽じゃない。仕事と違って口先が通用しないのだ。
心細い。オフロードのカリスマ、石川さんにコーチを依頼した。山を越え谷を越えて走るトレールラン(山岳マラソン)の国際的なスター選手だ。04年には米国の最高峰シリーズ4戦に完走し、その年世界で3人しか達成できなかった「ロッキーマウンテンスラム」の栄誉を獲得した。
石川さん 「トレールランでもアリゾナの岩だらけの砂漠80キロを走ったりする。ビーチランは使う筋肉が全く異なるが、一般ランナーにとっても、日常使わない部分に強い負荷を掛けることがいい刺激になるはずだ。ひざへの衝撃が少ないので、走り方を考えればけがのリハビリにも最適のメニューになる。これから注目される領域だ」
確かに100メートル選手からトライアスリートまで砂浜走を練習に取り込む選手が少なくない。
「前へ」忍者走
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| 最後尾でぼんやりと蜃気楼の浮かぶ? 辻堂海岸を目指す | |
スタート前に走り方を習った。かかとから踏み込まず、足裏の前半分で着地するそうだ。「極端に言えば着いた足が沈み込む前にひざを上げて、前に前に積極的に出ていく感じ」。それって昔漫画で見た忍者のお堀渡りだよ、できないよ。
事実できなかったが、速いランナーはそれに近い走法を自然習得したようだ。
3キロの部は参加14人。石川さんが集団をあおってくれて、1位浜田俊作さん(20)が10分03秒。8、9位には厚木基地勤務のファーロン・コードレイさん(44)と息子海君(7歳)が12分52秒でゴールした。マラソンのベスト3時間20分というコードレイさんは「日本でもこんなワイルドなレースをやっているとは思わなかった。面白い」。
実はおやじ、脚が痛かった。12歳年上と結婚した知人の祝宴があり、翌日二日酔いのままジョギングしたためだ。後輩が乳離れの時、おやじは肉離れだった。人生至る所落とし穴。それが初めは痛かったが、全身の苦痛でじきに忘れた。
ビリでも颯爽
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| よろけてゴール。最終走者には皆が温かい | |
第一、お仕着せのスポーツの概念を自分たちで打破した満足感が大きかった。無法者気分の自由さと開拓者気分のやりがいを両方味わえた。ビリも楽しかった。18分18秒。全員が家族のように迎えてくれた。<歌詞>あたたかき幸福のほほえみイ だ。
そうか、どんな所でも最終走者には敵がいないのだ。よし、残りの人生、この手でいくか。もっと早く気が付くべきだった。◇石川弘樹(いしかわ・ひろき) 神奈川県生まれ。中学時代はサッカーの東京選抜(読売ユース)で東農大卒。99年から「イーストウインド」でアドベンチャーレースを。02、03年と日本山岳耐久レース(ハセツネ)に連勝してトレールランの第一人者に。以後世界のレースで活躍中。172センチ67キロ。MTBなどアウトドア全般が趣味。http://www.hirokiishikawa.com
◇湘南ビーチラン2007シリーズ予定 ▽4月15日、6月24日、10月14日(3キロ、6キロ)鵠沼~辻堂海岸 ▽5月20日(ビーチマラニック10キロ)葉山一色海岸 【事務局】電話0466・26・4480 http://www.sports-buddy.jp/
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- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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