リオデジャネイロ五輪競泳女子200メートルバタフライで2大会連続銅メダルの星奈津美(26=ミズノ)が4日、都内で会見を開き、現役引退を表明した。五輪後、進退に関して考えていたが「最後の決勝レースの映像を見返しても、悔しい気持ちがわかず、出し切れたと感じた」と引退理由を説明した。

 埼玉・春日部共栄高3年だった08年の北京五輪に初出場。後半の強さを武器に200メートルバタフライの第一人者として長く日本を引っ張ってきた。12年4月の日本選手権では2分4秒69の日本記録を樹立。同年ロンドン五輪では銅メダル。昨夏の世界選手権では、同種目の日本女子で大会史上初の金メダルを獲得。今年リオデジャネイロ五輪では2大会連続銅メダルを得ていた。

 高校時代に甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるバセドー病を発症。薬を飲みながら競技の第一線で活躍してきた。数値が悪化した14年11月には甲状腺の摘出手術を受けた。「つらいことがあったからこそ、もう1度プールに戻りたいと、心から水泳が好きなことが分かった」。

 支えはリオ五輪後に結婚した夫と、母真奈美さん(53)だった。一般男性の夫からは「普通の人ができない経験をしている。強くてすてきな女性になってほしい」と言われた。母真奈美さんはレース前、食欲がなくなるほど、緊張していたという。「一緒に戦ってくれた」と家族に感謝するように言った。

 現役最後の2年間、指導を受けた平井伯昌コーチ(53)からは「五輪決勝後に“先生、出し切りました”と言われた。4年後の東京五輪ではスポーツ、競泳界に貢献してほしい。わたしのアシストもしてほしい」とエールを送られた。所属のミズノの中村薫監督からは「社としても女性管理職を増やす方針。努力と経験をいかして管理職になってほしい」と期待された。

 会見後は、取材者1人1人に、メッセージを書いた紙を渡した。病を乗り越えて五輪2大会連続メダル。おごり高ぶることなく、常に謙虚で真面目な人柄のままプールから去った。

 ◆星奈津美(ほし・なつみ)1990年(平2)8月21日、埼玉県越谷市生まれ。1歳で水泳を始め、春日部共栄高3年時の08年北京五輪に出場。早大3年時の11年世界選手権200メートルバタフライでは100分の1秒差でメダルを逃す。翌12年ロンドン五輪同種目で銅メダルを獲得。14年4月ミズノ入社。昨年世界選手権の同種目で日本女子初の金メダル。今年リオデジャネイロ五輪では同種目で連続銅メダル。8月の誕生日に一般男性と結婚。164センチ、56キロ。