<大相撲夏場所>◇千秋楽◇20日◇東京・両国国技館

 大相撲夏場所が、波乱の結末を迎えた。千秋楽の20日、大関琴欧洲(29)が休場。対戦相手で優勝争いのトップに並んでいた栃煌山(25)が不戦勝となり、この時点で1差で追う4敗の3人に優勝の可能性がなくなってしまった。史上初となった平幕同士の優勝決定戦は、モンゴル出身の旭天鵬(友綱)が、栃煌山を下し37歳8カ月で初優勝。初Vの最年長記録を樹立した。初の6大関となった本場所は、稀勢の里(25)以外の5人が優勝争いに絡めず、異例ずくめの土俵を演出してしまった。

 琴欧洲の休場がアナウンスされると、場内は騒然となった。土俵下の鏡山審判部長(元関脇多賀竜)は「朝、来てびっくり。不戦勝のブーイングは、すごかったな」と振り返った。勝ち名乗りを受けた栃煌山も「何とも言えない雰囲気だった」と話した。14日目を終え、3人が3敗で並んでいた。史上初めて、不戦勝で優勝決定戦に進出した。

 琴欧洲は14日目の旭天鵬戦で負傷した。取組後と千秋楽の朝に診察を受けたが、好転せず「右足根骨靱帯(じんたい)損傷で、約3週間の治療を要する」との診断書を提出した。師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は「大事な一番なのに、本当に申し訳ない。でも、あの足を見たら出ろと言えなかった。本人は痛みが治まれば、出たいと言っていた」と明かした。

 この日、350枚の当日券の販売開始は午前8時。7時15分には枚数分の人数で埋まり、行列は両国駅まで続いた。八角広報部長(元横綱北勝海)は「はってでも出てほしかった。師匠も自覚がない。朝早くから並んでくれたファンはどうなる?」と指摘した。

 前日のうちに休場を申し出れば、取組を作り直すこともできた。結局、白鵬ら4敗力士の優勝の可能性も、休場で消えた。北の湖理事長(元横綱)は、千秋楽恒例の協会あいさつで観客にわびた。定型文に「大関琴欧洲が休場いたし、誠に遺憾ではございますが…」との文言を入れた。

 3敗の3人のうち、稀勢の里が敗れ、決定戦は史上初めて平幕同士が顔を合わせた。はたき込みで、本割を勝ち上がった旭天鵬が優勝。いきなり決定戦に臨んだ栃煌山は「心のどっかで、(本割で)2人が負けたら優勝だというのは、なかったとは言えない。その分、ダメだったですかね」と悔やんだ。玉ノ井親方(元大関栃東)は「1度、先に相撲を取った力士の方が有利。その方が体が動く。初めてだったら、硬くなってしまう」と話した。

 今場所の異変は、初日に横綱白鵬が敗れたことから始まった。左手人さし指を剥離骨折し、3連敗もあった。ただし、波乱の一因は、稀勢の里以外の大関にもある。北の湖理事長は「優勝争いに加わったのは稀勢の里だけ。せめて大関の半分くらいは優勝戦線に残らないと。稀勢の里のほかの大関は期待外れです」と厳しく言った。

 初めて6大関が番付に載った夏場所は、初日に全員がそろい踏み。2日目は両国国技館となった85年初場所以来、ワーストとなる6080枚の入場券が残っていた。その後、稀勢の里が盛り上げ、最後はモンゴル出身で日本国籍を有する旭天鵬がファンを喜ばせた。今年は、日本とモンゴルの国交40周年。入門20年目のベテランが、荒れた15日間を締めくくった。