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蒼井優、圧巻ダンスで新人賞/映画大賞
- 新人賞受賞の喜びを語る蒼井優(撮影・橘信男)
昭和40年、東北の炭鉱町にフラダンスでミラクルを起こした女性たちの実話を描く「フラガール」(李相日監督)が4冠を獲得した。輝くような存在感で炭鉱に咲くフラガールを演じた蒼井優(21)が新人賞に選ばれ、先生役の松雪泰子(34)が主演女優賞、炭鉱の母を演じた富司純子(61)が助演女優賞を受賞。3女優が支えた同作は作品賞を受賞した。本気で夢をみた人たちの、真心が伝わる4冠だった。
4冠に輝いた「フラガール」について、蒼井は「自分の思っていた限界の先を見せてもらった作品。一生忘れられない」と愛着たっぷりに話す。
クライマックスのフラダンス。蒼井のキレ味抜群のソロと鮮やかな群舞は、映画史に残る名場面となった。「最後のダンスシーンがダメだったら、作品自体が意味のない物になると思った。ダンスのことが頭から離れなかった」。
娘を宝塚歌劇に入れたいという母親の夢で2歳からバレエを始め、タップダンス、ピアノ、日舞も身に付けている。死角はないはずが、フラダンスには大苦戦した。「重心の置き方がまるで違う。バレエは上へ、フラは下へ。こんなに難しいものかと…」。3カ月間の特訓でストイックに自分を追い込んだ。「『もうできない』というプレッシャーで、福島の撮影現場から逃げ出そうと思った。監督と共演者の方々に支えられました」。
「リリイ・シシュのすべて」(岩井俊二監督)でデビューして5年。“蒼井がいると作品が安定する”として、若手女優のキャスティングに必ず名前が挙がる。求められる演技はバリエーションに富み「男たちの大和」では、海上特攻に向かう少年兵の幼なじみ役、「ハチミツとクローバー」では天才肌の美大生、「虹の女神」蒼井優(21)では姉を失う盲目の難役に挑んだ。吉永小百合やオードリー・ヘプバーンのような古典的美少女の面影を残し、時に主演以上の存在感でスクリーンを輝かせる。「演技力なんてない。いただく台本が素晴らしいから、役や風景が完ぺきに動いて見えるんです。見えたものにいかに自分を近付けるかに委ねています」。
デビュー当時は「10代の思い出作りの感覚」だったが、3年前に釜山国際映画祭に参加し、日本映画への愛着を痛感した。「日本映画の良さを世界に認めてほしいし、私も日本映画を近くで見ていたい」。5年後、10年後が楽しみな若手として評価は高い。「演じることは、私という人間の中身を売る仕事。売れるものを絶やさないように、こつこつ自分と向き合っていきたい」と、まっすぐに未来を見詰めている。【梅田恵子】
[2006年12月5日8時53分 紙面から]
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