<阪神3-0ヤクルト>◇29日◇甲子園
トリビアンナイトだ。阪神鳥谷敬内野手(36)が、2000安打へ残り9本に迫った。2回の第1打席でヤクルト石川から先制決勝のタイムリー。攻守でドラフト2位の小野泰己投手(23)のプロ初勝利をアシストした。チームはこの日から甲子園で6連戦。阪神生え抜きでは藤田平以来2人目、大卒では初の快挙を、本拠地で達成するムードが高まってきた。
やはり、この男が打つと甲子園が沸き上がる。鳥谷が2回1死二塁の好機で中前適時打を放ち、先制点をたたき出した。初球だった。「永遠に真っすぐを狙っている」。タイミングを計り、真ん中にきた133キロを打ち返す。高くバウンドした打球は投手の頭上を越え、センターへ抜けた。二塁走者の中谷が生還すると、この瞬間を待っていたかのように、スタンドの虎党は大騒ぎだった。
クールに見える背番号1だが、胸に秘めたるリーダーシップで若手を勇気づけている。6月30日のヤクルト戦(甲子園)のこと。青柳が1イニング3死球を与えるというプロ野球ワーストタイ記録となる“事件”を起こしていた時だった。14年目を迎えたベテランは、三塁のポジションからマウンドへ向かった。そして、動揺を隠し切れていない青柳に一声掛けた。「コントロールが悪いのは知っている。0点で(ベンチに)帰ればいい」。鳥谷から掛けられた言葉が、心に染みこんだ。この一言で青柳は救われたという。
プレーはもちろん、存在感と深い経験値でチームを鼓舞している。この日も小野が3回、先頭の坂口に四球を与えると、すぐさまマウンドに足を運んだ。ルーキーを落ち着かせるために間を取り、告げた。「こういう日もあるから」。すると、次打者の山崎を4-6-3の併殺に打ち取り、波に乗る。魔法のような言葉で、新人右腕を立ち直らせ、初勝利をアシストした。
この日は1安打で、通算1991安打。金本監督も「できれば(2000安打を)甲子園で達成してほしい」と期待を寄せるが、ファンの思いも同じだろう。残り9本。ついにカウントダウンは1桁となった。誰もが待ち望む、歓喜の瞬間は、そこまで来ている。【真柴健】