【井上―松島対談3】ゴールは?松島「1部」井上「負けて再挑戦できるか」

対談で拳を突き出すポーズをとる松島幸太朗(左)と井上尚弥(撮影・狩俣裕三)

ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)と、ラグビーで15、19年ワールドカップ(W杯)日本代表のFB松島幸太朗(28=クレルモン)の豪華対談が実現した。

ともに他競技の現役選手との対談は初めて。井上は年内にWBC同級王者ノニト・ドネアか、WBO同級王者ジョンリール・カシメロとのビッグマッチ実現へ交渉中。松島は9月に開幕する世界最高峰のフランス1部リーグで2季目に臨む。気心知れた93年生まれの2人が、約1時間半語り尽くした。【取材・構成=松本航】

松島は2月、井上は4月に28歳となった。

井上 だいぶ疲れの抜けが変わってきた。20代前半はスパーリングで12ラウンド(R)やっていたけれど、ドネア戦は全部4(R)で仕上げた。やれると思ってもやらない。極力けがをせずに仕上げる感じかな。

松島 22(歳)の時とかは、どんなに走っても筋肉痛まで。走る距離が長いと古傷もあるけれど、膝とか、関節が痛くなってきた。

井上 ハードなトレーニングの翌朝とか感じる?

松島 アキレス腱(けん)がガッチガチ(笑い)。

井上 最近起きられない(笑い)。スタミナは不安だけれど、けがをしたら元も子もないから、難しい。

一方、体力を引き出しで補う考え方も違うという。

井上 ごまかすのは、まだやりたくない。35(歳)の選手とかの戦い方も味があるけれど、そこはまだ。バーンと仕上げて、まだまだ勢いで持っていきたい。

松島 選手として基本をやらないようになったら、どんどん落ちてきちゃう。やらなくなっちゃって、けがする選手を見てきたし。

井上 基本は大事。基本しかやっていないもん。結局、基本を抜いて、自分の好きなことだけをやっていたら、絶対に崩れていく。

松島 旬っていう意味では「まだいけるんじゃないか?」という感じがある。

井上 全盛期がいつなのかは引退して分かる。最近は英語を勉強し始めた。交通機関を使って、ホテルにチェックインできて、部屋の掃除を頼めるぐらいにはなりたい。外国の選手と話してみたいし、海外の生活はストレスがかかるから。フランス語は難しい?

松島 きつい(笑い)。去年はロックダウンで店とかも全然やっていないし、使う機会もないから「いいや」って…。英語をしゃべってくれる選手もいるし。

井上 カネロ(世界4階級制覇のサウル・アルバレスの愛称)がいきなり話し始めて、ビックリしちゃって。みんながそこから一気にファンになった。それは大事だなと。人気とかファン獲得の面で、フランス語を話せたら変わりそう?

松島 変わると思う。「勉強しているんだ」となるし、緊迫した状況で(声援が)後押しになると思う。

井上 (英語は)期待しておいて(笑い)。自己紹介ぐらい。ただ日本語でも、リング上で話す時に言葉が出なくなる。インタビューは厳しいかな(笑い)。

松島 勢いでいけそう。

対談は1時間を過ぎた。

井上 1つ聞きたいことがあった。幸太朗にとって「ゴール」ってどこ?

松島 欧州でやっていて、認められつつある状況で、それを本物にできるか。ゴールは近い実感があるけれど、それを達成したからモチベーションが下がるわけじゃない。欧州でNO・1になれるチャンスもあるし。

井上 引退を考える年齢とか、瞬間ってある?

松島 33(歳)あたりでどうなっているか。2部(リーグ)でプレーはあまりしたくない。1部(トップのリーグ)で終わりたい。

井上 体力が落ちてきたら、そこで考える感じ?

松島 1部でできるなら続ける…という感覚かな。

井上 自分は35(歳)までやりたい。でも仮に30(歳)で負けを味わう。そこから世界に再挑戦できる環境がなければ、やっていても意味がない。引退も考えるかな。一番は負けないことだけれど、体力で引退を考えるスポーツじゃない。どこかで負けた時、また挑戦できるならやる。そうじゃないとなかなか難しい。

松島は今月中にフランスへ渡る。1年後の再会を誓い、2人は別れを告げた。

井上 次はフィジカルトレーニングを一緒にやろうよ。めちゃくちゃ見たい。

松島 ぜひぜひ。こっちもスパーリングを見たい。

◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。元アマ選手の父真吾さんの影響で小1から競技を開始。相模原青陵高時代にアマ7冠。12年7月にプロ転向。国内最速(当時)6戦目で世界王座(WBC世界ライトフライ級)奪取。14年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、史上最速(当時)の8戦目で2階級制覇。18年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し、国内最速(当時)の16戦目で3階級制覇。19年5月にWBA、IBF世界バンタム級王者に。同年11月、WBSSバンタム級トーナメント優勝。164・5センチの右ボクサーファイター。

◆松島幸太朗(まつしま・こうたろう)1993年(平5)2月26日、南アフリカ生まれ。幼少時から日本で育ち、神奈川・桐蔭学園高で全国高校大会(花園)優勝。卒業後はスーパーラグビー(SR)のシャークス(南アフリカ)下部組織入りし、13年からサントリー。SRでは15年にワラタス、16年にレベルズ(ともにオーストラリア)、17~18年はサンウルブズ(日本)でプレー。日本代表41キャップ。20年から1911年創設のクレルモン(フランス)に在籍。父はジンバブエ人。178センチ、88キロ。

◆取材協力 今回対談を行った横浜ベイシェラトンホテル&タワーズは、井上が所属する大橋ボクシングジム(ホテルから徒歩5分)でのフィットネスやボクシングレッスン体験と、宿泊がセットになったプランを販売中。価格は1泊朝食付き1万8426円から。問い合わせは電話045・411・1133(同ホテル宿泊予約)

◆映像協力 株式会社ホリプロ

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