ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)と、ラグビーで15、19年ワールドカップ(W杯)日本代表のFB松島幸太朗(28=クレルモン)の豪華対談が実現した。
ともに他競技の現役選手との対談は初めて。井上は年内にWBC同級王者ノニト・ドネアか、WBO同級王者ジョンリール・カシメロとのビッグマッチ実現へ交渉中。松島は9月に開幕する世界最高峰のフランス1部リーグで2季目に臨む。気心知れた93年生まれの2人が、約1時間半語り尽くした。【取材・構成=松本航】
横浜港を望む格式高いホテルの一室。先に姿を見せたのは井上だった。6月20日に日本人初となる米ラスベガスでの連続防衛を達成。次のビッグマッチへ準備を進めている王者は、柔和な表情で松島を出迎えた。
井上 幸太朗、久しぶり。いつ帰ってきたの?
松島 7月5日かな。1カ月がたったぐらい?
松島は19年W杯日本大会で全体3位の5トライ。世界のトライゲッターと肩を並べ、世界最高峰のフランス1部「トップ14」からオファーが届いた。1年目の昨季から主力に定着し、欧州チャンピオンズカップを含めて27試合に出場して11トライ。日本代表の欧州遠征後に一時帰国していた。
井上 最後に会ったのは幸太朗が(20年7月に)フランスに行く前だよね?
松島 そうだね。今回のオフは(7月のアイルランド戦で右足を)けがをして3~4週間は休んだ。やっと普通に走れる感じかな。
出会いは2年前だった。
井上 最初は(19年11月の)ドネア戦を見に来てくれた。試合後に控室に来てくれたのに、まぶたを縫ってあいさつできなくて…。その後に(男子バスケットボールで同じ93年生まれの)富樫(勇樹)と集まって、一緒にごはんに行った。
松島 ここの関係は何回か食事をしたり、試合を見に来てくれて「(気が)合うんだろうな」っていうのはあるかな。
井上 例えば五輪を見ていても、接点のない選手は一ファンとして応援するだけ。モチベーションには直結しない。だから、この出会いは新鮮で、他競技からもらう刺激もあるんだろうと思った。それでラグビーも見に行った。幸太朗しか見ないけど(笑い)。体の使い方を見ていて「すげぇ」ってなった。
松島 こっちはパンチがえぐいって思った(笑い)。別格。日本代表でも「体幹が強いのかな?」と話題になった。聞きたかったのは、KOする時に「これで決まる」って打つ? 「いけるかな?」って感じ?
井上 大体は「いける!」という感覚。狙って急所に当てて「倒せる」って感覚かな。倒そうと思っていないパンチは「感触が抜ける」って言うけれど、その倒し方は過去にない。
互いに過去、他競技の選手との交流は少なかった。関心は「団体競技」と「個人競技」の違いに移った。
井上 「すごいな」と思うのは、視野の広さ!
松島 割とそうかも。パニックになっている味方も、よく見つける(笑い)。
井上 こっちは視野がむちゃくちゃ狭い。(運転)免許取る時に「視野が狭い!」って怒られた(笑い)。ここ(左右)はボクシングに必要ない。それを何十年やって(前方だけ)特化された。団体がうらやましいのは、練習をみんなで追い込める。その環境でもまれたら、もっと強くなれるんじゃないかなと思う。
松島 朝早い練習がすごく嫌いだから、個人競技は自分でスケジュールを決めるのはいいな(笑い)。
井上 「ちょっと眠い。10時からにしよう」とかね。全然OK(笑い)。逆にオーバーワークは大変そう。疲れていても「やらなきゃいけない」みたいな。
松島 フランスでも最初はあったかな。周りから認められたら「疲れている」と言って信じてもらえる。もし、自分が個人競技だったら(力を頻繁に)抜いちゃいそうで怖い(笑い)。
井上 もし団体競技をしていたら、すごく頑張っちゃうと思う。何事も1番になりたい性格。疲れていても全部の練習で1番にこだわるから、体の調整がすごく難しそうだなって思う。(続く)
◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。元アマ選手の父真吾さんの影響で小1から競技を開始。相模原青陵高時代にアマ7冠。12年7月にプロ転向。国内最速(当時)6戦目で世界王座(WBC世界ライトフライ級)奪取。14年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、史上最速(当時)の8戦目で2階級制覇。18年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し、国内最速(当時)の16戦目で3階級制覇。19年5月にWBA、IBF世界バンタム級王者に。同年11月、WBSSバンタム級トーナメント優勝。164・5センチの右ボクサーファイター。
◆松島幸太朗(まつしま・こうたろう)1993年(平5)2月26日、南アフリカ生まれ。幼少時から日本で育ち、神奈川・桐蔭学園高で全国高校大会(花園)優勝。卒業後はスーパーラグビー(SR)のシャークス(南アフリカ)下部組織入りし、13年からサントリー。SRでは15年にワラタス、16年にレベルズ(ともにオーストラリア)、17~18年はサンウルブズ(日本)でプレー。日本代表41キャップ。20年から1911年創設のクレルモン(フランス)に在籍。父はジンバブエ人。178センチ、88キロ。
◆取材協力 今回対談を行った横浜ベイシェラトンホテル&タワーズは、井上が所属する大橋ボクシングジム(ホテルから徒歩5分)でのフィットネスやボクシングレッスン体験と、宿泊がセットになったプランを販売中。価格は1泊朝食付き1万8426円から。問い合わせは電話045・411・1133(同ホテル宿泊予約)
◆映像協力 株式会社ホリプロ

