ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)と、ラグビーで15、19年ワールドカップ(W杯)日本代表のFB松島幸太朗(28=クレルモン)の豪華対談が実現した。

ともに他競技の現役選手との対談は初めて。井上は年内にWBC同級王者ノニト・ドネアか、WBO同級王者ジョンリール・カシメロとのビッグマッチ実現へ交渉中。松島は9月に開幕する世界最高峰のフランス1部リーグで2季目に臨む。気心知れた93年生まれの2人が、約1時間半語り尽くした。【取材・構成=松本航】

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ボクシングとラグビー。互いのトレーニングに対する興味は尽きなかった。

井上 幸太朗って素人目で見ても、瞬発力がすごい。でかい選手にフィジカルとスピードで勝負する。これって階級を上げた時に必要なもの。フィジカルを強くしながら、スピードを落とさない練習が知りたい。

松島 ラグビーは階級がないから、自分の適正体重を常に探す。80キロの時もあったし、去年は88キロに増やして「ちょっと重い」となった。試合の最後に疲れるから、今は85~86キロがいい。あとは「ケツ(尻)」を使わないといけない。ケツを使えていないと太ももの肉離れもしやすくなる。どんだけ疲れていても、そこだけはトレーニングする。

井上 負荷をかける?

松島 スクワットは150~170キロを3~5回やるかな。あとはチューブ。脚に巻いて10回3セット、左右に振る動きを繰り返す。ケツを使えていると、いいパフォーマンスになる。

井上 ケツは一緒。パンチを打つ、リングのマットを踏みつけるのもケツを使う。こっちはあまり負荷をかけず、跳びはねるようなスクワットをする。ボクシングって多分、ラグビーよりフィジカル面に対する考え方で遅れている。元々は筋トレNGの競技だった。

松島 ラグビーはウエートトレーニング、スピードや瞬発系…とチームにそれぞれ専門のコーチがいる。

井上 それをボクシングもやらないといけない。技術、スピード、パワー…って特化した専門のコーチ。

松島 フランスで驚いたのは、試合にずっと出ている人は血液を取られる。血流で疲れを見る。例えば土曜が試合だったら、再集合する月曜の数値で「今日は練習なしね」とか。これは日本もだけれど、GPSで走る距離とかも全部出る。

井上 自分的にすごく疲れていても、血液取られたら「大丈夫じゃん」ってなるのか。そこまで追い込まれてみたいけれど、ずっとやりたくはない(笑い)。

競技は違うが、2人は「日本人」「軽量級(小柄)」といったレッテルをはね返し、世界に認められた。

井上 元々は「アメリカでやりたい」というのはなかった。ラスベガスで軽量級は人気がない。でも、パフォーマンス次第で注目してもらえるというのは、ローマン・ゴンサレスが示してくれた。そこで「この試合をすれば、これだけ沸くんだ」って意識し始めた。

16年、ゴンサレスの4階級制覇をロサンゼルスで観戦した。米老舗誌ザ・リングは「パウンド・フォー・パウンド」と称し、全17階級あるボクサーを体重差がなかった場合の実力でランキング化。過去にゴンサレスは1位に輝き、井上も日本人最高の2位につける。

井上 日本ボクシング界のことを考えて…というよりは、まずは自分の評価を上げたい。現役中にどれだけの結果を残せるか。その結果が(日本ボクシングの発展に)つながればいい。

19年W杯の活躍でフランスから声がかかった松島も、井上の考えに同調した。過去に元日本代表の大畑大介氏、五郎丸歩氏らが挑戦しながら、定着できなかったリーグで地位を築いている。

松島 W杯である程度活躍できて、フランスから声がかかって、去年は試されている立場。せっかくフランスでやっている。まずは自分が認められたい。自分が活躍することで、日本人も行きやすくなると思う。

◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。元アマ選手の父真吾さんの影響で小1から競技を開始。相模原青陵高時代にアマ7冠。12年7月にプロ転向。国内最速(当時)6戦目で世界王座(WBC世界ライトフライ級)奪取。14年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、史上最速(当時)の8戦目で2階級制覇。18年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し、国内最速(当時)の16戦目で3階級制覇。19年5月にWBA、IBF世界バンタム級王者に。同年11月、WBSSバンタム級トーナメント優勝。164・5センチの右ボクサーファイター。

◆松島幸太朗(まつしま・こうたろう)1993年(平5)2月26日、南アフリカ生まれ。幼少時から日本で育ち、神奈川・桐蔭学園高で全国高校大会(花園)優勝。卒業後はスーパーラグビー(SR)のシャークス(南アフリカ)下部組織入りし、13年からサントリー。SRでは15年にワラタス、16年にレベルズ(ともにオーストラリア)、17~18年はサンウルブズ(日本)でプレー。日本代表41キャップ。20年から1911年創設のクレルモン(フランス)に在籍。父はジンバブエ人。178センチ、88キロ。

◆取材協力 今回対談を行った横浜ベイシェラトンホテル&タワーズは、井上が所属する大橋ボクシングジム(ホテルから徒歩5分)でのフィットネスやボクシングレッスン体験と、宿泊がセットになったプランを販売中。価格は1泊朝食付き1万8426円から。問い合わせは電話045・411・1133(同ホテル宿泊予約)

◆映像協力 株式会社ホリプロ

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