稀勢の里、勢止めて日本人8年半ぶり中日単独トップ

稀勢の里(右)は寄り切りで勢を下し8連勝で勝ち越しを決めた(撮影・外山鉄司)

<大相撲春場所>◇8日目◇20日◇エディオンアリーナ大阪

 大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が日本人力士同士の全勝対決を制し、優勝争いの単独トップに立った。東前頭4枚目の勢(29)を寄り切り、13連勝した13年夏場所以来4度目のストレート給金。日本人力士が単独トップで全勝ターンするのは、07年秋場所の安美錦以来8年半ぶりとなった。入門から丸14年。初土俵を踏んだ地で「荒れる春」の主役に躍り出た。

 どっしりと、腰を下ろした。得意の左おっつけで先手を打った稀勢の里は、左を深く差して攻勢に出る。勢の2度の小手投げにも動じず、最後は上手を引くと再びおっつけ、寄り切り。地元大阪の大声援を浴びる相手も諦めざるを得ない、盤石の相撲で全勝対決を制した。4度目のストレート給金で、単独トップは自身初。それでも「まだまだ、これからですね」と表情を変えることなく、かぶとの緒を締めた。

 02年春場所で初土俵。毎年、大阪・港区の宿舎で汗を流してきた。「新十両(昇進を決めたの)もここ。あっという間だね」と懐かしむ。その後は何度も優勝争いを演じ、綱とり場所も経験。13連勝した3年前の心境は「忘れた」と笑う。それだけ、時は流れた。だが今場所は「今の方がいいと思う」と自信を持って答える。大阪入り前から稽古休みの日にも1人、すり足の音を響かせた。焦点は「1年の始まり」という浪速の春。すべては悲願のため、相撲に集中してきた。

 今場所の好調ぶりに、周囲も一目置き始めている。何度も立ちはだかってきた最大の壁、白鵬には「落ち着いている。みんなもそう思うだろう? あの落ち着きは、どこから来ているのか…」と言わしめた。無冠の過去に終止符を打つ日に、期待も高まってきた。

 今日9日目は、武蔵丸-貴ノ浪戦を抜く幕内単独最多59度目となる琴奨菊戦。初場所では見せ場なく圧倒され、日本出身力士の10年ぶり優勝を先に決められた。悔しさもあるが「今場所は今場所ですから。力を出し切って行くだけ。自信を持ってね」。稽古でも火花を散らすライバルに、これ以上先を越されるわけにはいかない。何年もの間「横綱に最も近い力士」と言われてきた力と意地を、示す時が来た。【桑原亮】

 ◆中日単独トップから優勝した日本人力士 03年九州場所で13勝2敗で優勝した大関栃東が最後。10日目まで全勝で行くも、11日目に土佐ノ海に敗れて横綱朝青龍に並ばれる。互いに13日目に敗れて2敗で並走。千秋楽は相星決戦となり、栃東が押し出しで勝って2度目の優勝を飾った。