政界地獄耳

犠牲者を悼んだ大統領、触れない安倍首相/地獄耳

★28日午前、首相・安倍晋三と来日中の米トランプ大統領は神奈川県横須賀市の海上自衛隊横須賀基地で、今後軽空母に改修される護衛艦「かが」に乗艦して、海上自衛隊と米海軍の隊員を激励した。それぞれ、ヘリコプターで甲板に乗艦した両首脳は日米同盟の強固なきずなについて触れ、首相は「日本の自衛隊と米軍が深い友情で結ばれていることをともに喜び合いたい」とし、「祖国から遠く離れた地でわが国と地域の平和と安全を守り、日米同盟の抑止力を高める在日米軍の皆さん、そしてその最高司令官であるトランプ大統領に敬意を表するとともに、改めて感謝を申し上げたい」と述べ、最後には自衛隊最高指揮官、内閣総理大臣、安倍晋三と訓示を締めくくった。

★トランプは訓示の中で同日朝、川崎市登戸で起きた小学生らが男に刺された事件に触れ、「被害者とその家族のために深く悲しんでいる」と朝の事件に触れた。首相は官邸に戻ってから13時54分、「大変痛ましい事件で、幼い子供たちが被害に遭ったことに強い憤りを覚える。子供たちの安全を何としても守らなければならない」と初めて事件に触れている。

★時系列に見てみよう。事件発生、119番入電が朝7時45分。メディアに速報が流れたのが8時12分。両首脳のかが乗艦が10時34分。横須賀と同じ県内である川崎市で起きた出来事への対応と反応の素早さに大きな差が出た。日米同盟を強調し、米大統領と護衛艦上で安全保障の強固なきずなを示したかった首相だが、国民の生命についての反応が鈍く安全保障は軍事力だけではないことをトランプに教わった形だ。ただ事件発生から訓示まで十分時間があり、トランプが触れているのに首相が触れなかったのは恥ずかしい出来事だ。原稿に書かれていなくとも政治家であり首相として一言は言えたはずだ。国民の命を守る使命を帯びる国のリーダーとしての最低限の礼節を欠いたといえる。トランプから国の指導者のあるべき姿を示された首相は国民からどう見られたか。(K)※敬称略

政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

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