【ルポ】世界自然遺産から甲子園へ/奄美大島の公立高・大島に行ってきました〈1〉

鹿児島と沖縄のほぼ中間に位置する奄美大島。2021年(令3)7月26日に徳之島、沖縄島北部及び西表島とともに国内5件目の世界自然遺産に登録されました。アマミブルーとも称される透明度の高い青い海に浮かび、人口は約6万人。そんな亜熱帯の離島から、鹿児島県立大島高校は、22年春のセンバツに出場しました。同年のドラフトでは左腕エースの大野稼頭央投手(18)がソフトバンクから4位指名されてプロ野球選手も輩出。しまっちゅ(島人)たちの快挙の背景をルポします。現地のにおいが伝わる4回連載。

高校野球

奄美空港から1時間 名瀬へ

福岡空港を離陸して約1時間15分。飛行機が奄美空港に近づくと、澄んだエメラルドグリーンの海と、雄々しい山なみが目に飛び込んでくる。空港の空き地では、野良猫たちが気持ちよさそうに昼寝している。

奄美大島は鹿児島南部の離島。約380キロ離れた鹿児島本島と沖縄のほぼ真ん中に位置し、動植物の多様性が認められて21年7月に世界自然遺産に登録された。PRムービーの題名は「いのち、むきだし。奄美大島」と熱い。

福岡からの直行便は1日1本だけで、出発は午前7時。帰路も午後6時35分発の1本しかない。早朝移動で重いまぶたをこすりながら「しまバス」に乗り込むと、ベンチもないバス停を次々と通り過ぎていく。

サビの目立つ看板には「動物注意」。古風な民家が転々と建っている。道中はコンビニも飲食店も確認できない。約1時間弱、距離にして約30キロ、運賃は1000円前後で、島民が「最も栄えている」と話す名瀬町に着く。