浅野の悔し涙に本田「泣く選手の気持ち分からない」

後半ロスタイム、ゴール前での絶好の決定機にパスを出す浅野(撮影・江口和貴)

<キリン杯:日本1-2ボスニア・ヘルツェゴビナ>◇決勝◇7日◇吹田S

 日本代表FW浅野拓磨(21=広島)が、判断ミスで2試合連続得点を逃した。ボスニア・ヘルツェゴビナ戦で代表初先発。1-2の後半ロスタイム、DFの裏へ抜け出すもシュートではなく、パスを選択し決定機を逃した。試合後は悔しさのあまり、ピッチ上で涙。FW本田、MF香川の大黒柱2人を負傷で欠く戦いで、新戦力が最大のアピールチャンスを逃した。

 ピッチ中央で喜ぶ敵を背に、浅野は首からかけた白いタオルで何度も目頭を拭いた。寄り添うスタッフや選手に肩をたたかれても、顔を上げることができなかった。「チャンス来い、来い」と90分願い続け、訪れた試合終了間際の好機。顔を出したのは弱気な自分だった。

 50メートル5秒9の快足には余力があった。1点を追う後半ロスタイム。後方からのパスに抜け出すところまでは完璧だった。左前方にGKが見えた。「そのチャンスを決めようと思っていたけれど、一瞬の判断で…。悔しいです」。ゴール中央に出したパスは、DFの網にかかった。3日のブルガリア戦は、ハリルホジッチ監督がPKのキッカーに宇佐美を指名しながら、それを“強奪”して代表初得点。指揮官が「浅野はボスになってしまった」と評した強気な姿勢が消えていた。

 試されている立場での失態に「最後の大きなチャンスが…。これが自分の実力だと思う」。国内組だけで臨んだ国際Aマッチを除いて、本田と香川の2人を同時に欠いたのは4年半ぶり。宇佐美、清武と2列目を形成し、使命は分かっていた。ハリルホジッチ監督は渋い表情で「あそこは簡単に決められたが、彼はパスを出した。経験が足りなかったのかもしれない」。歓喜の初ゴールから4日。後味は悪かった。

 8月に待つのはリオデジャネイロ五輪。幼少期から三重・菰野(こもの)町にある実家のテレビでは、代表戦が映し出されていた。後半になると衝動に駆られ、2人の兄、3人の弟と和室でボールを蹴った。今も実家の和室の障子に紙はない。無我夢中で目指した場所で得た苦い味を、ブラジルでの戦いにつなげるしかない。

 「もっと、もっとやらないといけない」

 暗闇の中、バスに乗り込む表情は晴れやかだった。戦いはここからだ。【松本航】

 FW本田 ミランでも負けて泣く選手がいますけどね。僕は泣かないんで、泣く選手の気持ちは分からない。収穫は負けたこと。いい時期に負けた。若手も何人か試せた。それが収穫。サッカーは甘くない。(3日ブルガリア戦の)7点取った勝利が邪魔をした。精神的油断が敗戦を招いた。