一夜で変わった新潟呂比須監督の戦術に選手戸惑い

11月18日、甲府戦で指示を出す新潟の呂比須監督

 アルビレックス新潟は今季7勝7分け20敗、勝ち点28の17位でシーズンを終え、来季J2降格が決まった。04年から14年間在籍していたJ1の座を明け渡し、来季は15年ぶりにJ2で戦うことになった。低迷を続けた今季を連載「J2降格 アルビの迷走」で回顧する。第1回はシーズン途中から指揮を執り、今季限りで退任した呂比須ワグナー監督(48)の戦い方を検証する。

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 本拠地デンカビッグスワンスタジアムの正面スタンド前に、グラウンドコートを着た新潟の全選手、スタッフが整列した。それを従えるように、呂比須監督がマイクの前に立った。

 2日、今季最終節C大阪戦後のセレモニーでのあいさつ。呂比須監督は退任に際し、シーズン中の支援への感謝を込めた。「結果がついてこなかったことに申し訳なく思っています。1年でJ1に戻れるように頑張ってほしい。来年もアルビのために応援をお願いします」。

 成績不振により辞任した三浦文丈前監督(47)の後任として招かれた。初戦の第12節札幌戦(5月20日)は1-0の勝利だった。だが、この後はクラブワーストの6連敗を含む16試合未勝利。第29節G大阪戦(10月14日)で就任2勝目を挙げるまで、147日を要した。その後は最終節まで5勝1分けと無敗。第31節鳥栖戦(10月29日)から4連勝を記録した。「選手は何をすればいいか分かってきた」。呂比須監督は勝ち出した要因を話した。同時に「思ったより時間がかかった」と本音をもらした。

 三浦前監督はロングボールから前線を走らせる戦術を軸にした。守備は自陣に引いて守る。前線からプレスをかけ、ショートカウンターを狙う新潟伝統のスタイルとは異なった。その状態で引き継いだ呂比須監督は「攻守にアグレッシブ」を掲げて再建に乗り出した。

 就任して初練習を行った5月16日、呂比須監督は厳しくボールを奪い合うことを要求した。試合形式でも最前線からプレスをかけて、カウンターを提唱。本来の「新潟スタイル」だった。それが翌17日に大きく変わる。「プレスをかけるな。自陣に引いて中盤と最終ラインでブロックをつくれ」。その陣形で相手がボールを入れてきた想定での守備を繰り返した。今季で引退したMF本間勲(36)は「前日からの変化に正直、戸惑った」と言う。

 呂比須監督が引き継いだ時点で11試合25失点。守備の立て直しが急務だった。「プレスはリスクが大きい。まず失点しないこと」。課題を克服し、自信を取り戻してからプレスをかける守備に-。指揮官は一夜での戦術変更をこう話した。

 それは選手が描いていたイメージとは違うものだった。指揮官に生じた迷い。不振の兆候は、呂比須監督が練習現場に出て2日目に見えていた。(つづく)【特別取材班】