W杯番狂わせへ西野監督、ノーサプライズ・ジャパン

W杯ロシア大会の日本代表発表会見に臨む西野監督。右は日本サッカー協会田嶋会長(撮影・山崎安昭)

 史上初のノーサプライズ・ジャパンの誕生だ。日本サッカー協会(JFA)は5月31日、都内のホテルでワールドカップ・ロシア大会に臨む日本代表23人を発表した。西野朗監督(63)があっさり、23人を読み上げたが、サプライズはなし。「外れるのはカズ、三浦カズ」のあのフレーズから始まり、過去5大会世間を巻き込むドラマがあったが、今回はまるで無風。逆風吹き付ける西野ジャパン23人のサムライは、ロシアでサプライズを起こせるのだろうか。

 W杯のメンバー発表は4年に1度の国民的行事のはずだが、大きな会見場は埋まらなかった。空席がぽつぽつ。それでも報道陣286人、テレビカメラ38台が固唾(かたず)をのんで見守る中、スポットライトを浴びた西野監督が静かな口調で、選手23人を読み上げ始めた。

 「川島、東口、中村」とGKから始まったが、23人目の武藤まで、まるで小川がさらさらと流れるようによどみなく終わってしまった…。会場のどよめきは、一切なかった。

 23人のリストは熟考し、導き出したもの。「これは瞬間に決めれるものでもない。昨日のゲームがすべてでもない。いろいろ総合的に考えた中で、来月の19日(コロンビアとの初戦)にベストパフォーマンスを出してくれる選手、いろんな可能性を考えた中で選ばせてもらいました」。

 もちろん、メンバー選考はサプライズありきではない。ただ、W杯最下層の第4ポッドから格上ばかりの1次リーグで番狂わせを狙う日本は、選考を勝負手にすることもできたはずだが、それもなかった。

 本田、香川、岡崎のいわゆる「ビッグ3」も選出された。指揮官は本田に対し「何しろ、彼のああいう影響力は、チームにプラス(材料)をもたらしてくれている」と言い、香川にも「中盤オフェンシブな中での独特な感覚、センスは高まっていく」。替えの利かない存在として位置付けた。

 23人で国際Aマッチの総出場数が1000試合超の、ベテランぞろい。西野監督の描く戦いの「絵」を彩る絵の具はそろった。渋い色ばかりかもしれないが、ダンディーな筆遣いに対応できそうな面々でもある。

 今回と同じ2段階選考だったあの「外れるのはカズ、三浦カズ」の98年フランス大会以降、02年の俊輔落選と中山、秋田の選出、06年の巻、10年の川口、そして14年の大久保といつもドラマがあった。だが、今回はなし。ドラマを本大会のピッチで巻き起こしてくれるだろうか。

 96年アトランタ五輪でブラジルを倒す「マイアミの奇跡」を成し遂げた指揮官は、ロシアでの奇跡について聞かれ、控えめに言った。「初戦のコロンビアに対して、強く日本代表チームが入っていけるようにしたい。あのコロンビアを倒す、小さな奇跡かもしれないですけど」。コロンビア戦の開催地はサランスク。「サランスクの奇跡」を目指し、史上初のノーサプライズ・ジャパンが船出する。【八反誠】