松山英樹アドレナリン全開V マネジャーに感謝伝え

最終ラウンド、プレーオフ4ホール目の17番、バーディーで大会連覇を決めガッツポーズする松山(撮影・菅敏)

<米男子ゴルフ:フェニックス・オープン>◇最終日◇5日(日本時間6日)◇アリゾナ州TPCスコッツデール(7261ヤード、パー71)◇賞金総額670万ドル(約7億7100万円)優勝賞金120万6000ドル(約1億3900万円)

 世界ランク5位の松山英樹(24=LEXUS)が、日本勢単独最多となる米ツアー通算4勝目を挙げた。1イーグル、3バーディー、ノーボギーの66をマーク。通算17アンダーの267で並んだウェブ・シンプソン(31=米国)との4ホールに及ぶプレーオフ(PO)を制した。大会連覇はアーノルド・パーマーらに続いて史上6人目、米国人以外では初めて。快挙を足掛かりに、4月のマスターズ(ジョージア州オーガスタ)で日本男子初のメジャー制覇へ突き進む。

 ウイニングパットは3メートルの緩やかなスライスラインだった。昨年リッキー・ファウラー(米国)を倒したPO4ホール目の17番パー4。松山が再び死闘に終止符を打った。「去年は(体力的に)全然余裕で何ホールでもいけるという感じだったんですけど、今年は早く終わってくれと思っていました」。苦笑いで明かした胸の内が、1年前と全く違う勝利を物語っていた。

 逆転劇の仕掛けは3番パー5で始まった。残り254ヤードから4番アイアンでピンそば60センチにつけるスーパーイーグル。「今年もいけるんじゃないか」。ただ13番でトップを捉えながら上がり3ホールでバーディーパットを決めきれなかった。18番、入れれば優勝の5・5メートルもあとひと転がりが届かない。

 「ゴルフ人生で一番いいパットだった」昨年正規18番のバーディーパットの感覚を求めて、8月に3時間も練習場でボールを転がし続けたこともあった。執念が実ったのか、PO2、3ホール目は相手のパットがわずかに外れて望みをつないだ。粘り勝ちだった。

 丸山茂樹と自身が持っていた記録を上回る米4勝。「そこに挑戦したのも僕だけ。丸山さんの3勝を早く超えたいと思っていた」と胸を張る。正規18番では進藤キャディーが「飛びすぎて逆に(落としどころが)狭くなる」と苦笑する超ビッグドライブ。PO1ホール目の第1打は海外メディアカメラマンが誤ってインパクト前からシャッターを連写も、最後は片手1本でフェアウエーに運んだ。

 アドレナリン全開の理由は、優勝を決めた17番グリーンの脇で唐突に明かされた。「ボブさん、誕生日おめでとう。ここ(優勝グリーン)で言うために、ずっと(おめでとうを)言ってなかったんだ」。5日は米国でマネジャーとしてサポートするロバート・ターナー氏の64歳の誕生日。当人同士しか聞こえないほど小さな声で感謝を伝えていた。

 「僕が日本で一番のプレーヤーかと言われたら、まだそうは思わないですけど、しっかりとそうなっていけるように頑張りたい」。本人にとっては通過点だが、ツアー史上最多となる65万5434人を集めた大会で間違いなく証明した。これまでで最も強い日本人ゴルファーは、松山英樹であると。【亀山泰宏】

 ◆松山英樹(まつやま・ひでき)1992年(平4)2月25日、愛媛・松山市生まれ。明徳義塾高から東北福祉大へ進み、11年マスターズで日本人初のベストアマ。大学4年の13年4月にプロ転向し、日本ツアー賞金王。日本ツアー8勝。13年10月から米ツアーに本格参戦し、14年6月初優勝。昨季(15~16年)の米ツアー賞金ランキング9位。181センチ、90キロ。

 ◆フェニックス・オープン 32年に第1回が開催された歴史ある大会。80年代まではフェニックスで行われていた。現在は隣町のスコッツデールで開催されている。最多優勝はアーノルド・パーマー、ジーン・リトラー、マーク・カルカベッキア、フィル・ミケルソン(いずれも米国)の3回。最少スコアはカルカベッキアとミケルソンの28アンダー。