宮里藍 最終ホール異様な雰囲気も勝負師の姿貫く

12番、大勢のギャラリーに囲まれティーショットを放つ宮里藍(撮影・柴田隆二)

<女子ゴルフ:サントリー・レディース>◇第1日◇8日◇兵庫・六甲国際GC(6538ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝1800万円)

 今季限りで引退する宮里藍(31=サントリー)が大観衆の声援に応え、2アンダー70で発進した。引退表明後の初戦で、第1日の大会最多を更新する6735人のギャラリーの前で3バーディー、1ボギー。7年ぶりに同組となった上田桃子(30)とともに、首位と5打差22位につけた。感傷的に涙をこぼした上田と対照的に、感情を押し殺してプレーした。辻梨恵(23)が7アンダーで単独首位に立った。

 引退を決めた宮里の最終章は、霧雨の10番から始まった。インスタートから7ホールはノーバーディー、1ボギー。パー5の17番のティーグラウンドに立った時だった。同組の上田が耳元でささやいた。「そろそろですね。バーディーを取って、ガッツポーズしましょうよ!」。その声が、心を奮い立たせてくれた。6メートルのパットを沈め、最初のバーディーを奪った。

 「桃子とはお互いに『負けないぞ』と言っていました。我慢のゴルフだったので、同じタイミングでそろそろエンジンをかけようかという意見になった」

 大会後は米ツアーに専念するとみられ、国内での集大成になる。詰め掛けた観衆は6735人。ほとんどが宮里の組についた。最終ホール9番。まるで花道ができたような大観衆に包まれた。異様な雰囲気に苦楽をともにしてきた1つ年下の上田が、感極まった表情になった。対照的に宮里は感情を殺し、最後まで勝負師としての姿を貫いた。

 「最後の9番は日曜日(最終日)にしか見たことのない景色を、木曜日に見ました。今、私が一番邪魔をするんじゃないか、試合を妨げるのではないか、と思うのは感情的になること。そこは抑えています。頑張りたい気持ちが切れてしまうから。だからウルッと(涙が)くることは1ミリもなかった。バーディーを取ることしか考えていなかった。そこは淡泊に見えてしまうかも知れないですね」

 気丈にそう語る。だが上田がホールアウト後に、こらえていたはずの涙を流したことを伝え聞くと、心がほんの少しだけ乱れた。

 「結果次第では、桃子と一緒に回るのは明日が最後になってしまうかも知れない。今は全力で自分をコントロールしているけれど、明日は自信がないです」

 首位と5打差。小さな体で世界ランク1位をつかんだ実力者にとって優勝は射程圏だ。「(引退までの)リミットがあるので、これからは今までとは違う未知の世界になる」。残り3日。“未知の宮里藍”を日本中に見せる。【益子浩一】

 ◆平日では今季最多 6735人は今季ツアー15戦の第1日入場者数で2番目。だが、1万3097人のサロンパス杯は祝日(5月4日)で、平日では最多だ。上位3試合はいずれも宮里が出場している。