高梨沙羅W杯最多勝王手「土俵違うので」恐縮も

<W杯スキー:ジャンプ女子>◇個人第14戦◇5日◇オーストリア・ヒンツェンバッハ(ヒルサイズ=HS94メートル)

 高梨沙羅(クラレ)が3連勝で、W杯通算勝利数を52勝に伸ばした。1回目89メートルで1位、2回目は最長不倒の92メートルを飛び、254・8点で今季8勝目。グレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)が持つW杯通算最多53勝に、あと1と迫った。伊藤有希(土屋ホーム)は1回目82・5メートル、2回目89・5メートルの237・6点で7位。勢藤優花(北海道メディカルスポーツ専門学校)は13位、岩渕香里(北野建設)は20位だった。

 昨季2戦2勝と相性の良い会場で、高梨が完全に調子を取り戻した。1回目に89メートルでトップに立つと、2回目も勢いは止まらなかった。直前にソチ五輪金メダルのフォクトが91メートルの大ジャンプでプレッシャーをかけるも動じない。追い風の中、ぐんぐん飛距離を伸ばし、ヒルサイズに2メートルと迫る92メートルと貫禄の飛躍で、逃げ切った。

 シュリーレンツァウアーのW杯最多53勝に王手をかけた。男子の記録と比べられると「土俵が違うので」と恐縮するが、継続して勝ち続けられるのは、それだけの技術と精神力を持ち合わせているからこそ。ぶれのない空中姿勢で完勝し、3戦続けて表彰台の中央に立った。

 本番前の試技では断トツの93メートルを飛び、観客をどよめかせた。調子を上げてきた五輪初代女王フォクトも、4日の第13戦で3位に入った後、高梨の強さの秘密を問われ「それを知っていたら自分も全て同じようにやるのに」と舌を巻くほどだ。50勝に王手をかけた1月14日札幌大会から5戦未勝利と停滞も、1月29日のルシュノブ大会(ルーマニア)で節目を超えてから絶好調。ここから一気にジャンプ史を塗り替えにいく。

 ◆スキーのW杯通算勝利 最多は女子フリースタイル・複合106勝のコニー(スイス)で、ジャンプは男子53勝のシュリーレンツァウアー(オーストリア)。ジャンプ女子は、52勝の高梨がトップで、13勝のヘンドリクソン(米国)、12勝のイラシュコ(オーストリア)となっている。

 ◆グレゴア・シュリーレンツァウアー 1990年1月7日、オーストリア生まれ。W杯は16歳だった06年12月のリレハンメル大会で初優勝。通算53勝、08~09年と12~13年シーズン総合優勝。五輪で銅2、世界選手権で金1、銀3、フライング世界選手権で金1、銀1(いずれも団体を除く)。