笑顔の「さえルカ」が育んできた温かい演技、見えてきた道筋

フィギュアスケート・ペアの「さえルカ」こと清水咲衣(19)、本田ルーカス剛史(22)組(木下アカデミー)は、合計135・58点の6位でシニア国際大会のデビュー戦を終えました。今季はケガに苦しめられましたが、2人ならではの温かい演技は確立。目指すべきペア像も、輪郭がはっきりしてきています。冬季アジア大会の舞台裏を「Ice Story」としてお届けします。

フィギュア

ペアフリーで演技する清水咲衣(右)本田ルーカス剛史組(共同)

ペアフリーで演技する清水咲衣(右)本田ルーカス剛史組(共同)

「さえルカ」の演技を思い浮かべた

氷点下20度。スマートフォンに表示されたその数字を「2度」と勘違いするくらいには、ハルビンのまちは穏やかだった。分厚めのインナーにスエット、そしてダウンジャケットと、とりわけ防寒対策をしていたわけではないが、想像していたよりもはるかに過ごしやすい。それどころか、マスクの中から上がってくる息がまつげに絡まり、ただでさえ輝くまちのイルミネーションが、なおさら幻想的に、柔らかな光となって私の目を癒やしてくれる。

中国・ハルビンの夜の町並み(撮影・竹本穂乃加)

中国・ハルビンの夜の町並み(撮影・竹本穂乃加)

2月13日木曜日、フィギュアスケートの全種目が終了した日。パソコンやカメラなどを詰め込んだリュックサックを背に、大会期間中にルーティン化した約1時間の散歩道を歩く私は、目の前に広がる異国の景色の中に「さえルカ」の演技を思い浮かべていた。

2人は笑顔を崩さなかった

あれは、12日夜に行われたフリー。

ドビュッシーの「月の光」に乗せて、なめらかに氷上を舞う。清水の自然に上がった口角。プログラムの穏やかさを引き立てる柔和な目元。カメラのレンズを隔ててまで、温かみ、2人の温度が伝わってくるような気がする。スロージャンプ2本で転倒し、特に2本目の転倒時は清水が激しく氷にたたきつけられたように見えたが、それでも笑顔で滑り切った。昨年末の全日本選手権で清水が左肩を脱臼し、演技を中断する様子を現場で見ていた私。思わず顔の前に構えたカメラを下げてしまったが、海を隔てた極寒の地で、力強く、シニアカテゴリーとして初めて臨んだ国際舞台を滑っていた。

フリーに臨んだ清水咲衣、本田ルーカス剛史組(撮影・竹本穂乃加)

フリーに臨んだ清水咲衣、本田ルーカス剛史組(撮影・竹本穂乃加)

本田が清水を後ろから抱きしめ「最後まで頑張ったね」と声をかける。空色に染まった会場の中で、2人の“初舞台”の幕が閉じた。

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スポーツ

竹本穂乃加Honoka Takemoto

Osaka

大阪府泉大津市出身。2022年4月入社。
マスコミ就職を目指して大学で上京するも、卒業後、大阪に舞い戻る。同年5月からスポーツ、芸能などを取材。